表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1391/1528

海底パイプライン(二百三)

「若頭っ! 持って来ましたぜっ!」「一本寄越せっ!」

 軍との交渉を、若頭は余程警戒していたのだろう。

 後ろの物陰からバズーカ砲を持ち出して来たではないか。しかも取りに行ったのは二人なのに、持って来たのは四本もだ。

 その内の一本を奪い取ると、手慣れた感じでセットする。あっという間に照準器がピョンと起き上がり、若頭は空に向かって構えた。

 しかし空は雲一つない。『音がする方』を探し、バズーカ砲を振り回してみるが、やはり雲も無ければヘリの姿も無し。


「おうおうおうっ! 何処から来るっ! 答えろっ!」

 最後は目の前の『石井中佐』に向けた。至近距離だ。

 しかし石井中佐は落ち着いたもので、ニヤニヤ笑ったまま再び時計を見たのみ。『どうせ撃てやしない』と思っているのだろう。


「若頭ぁ、危ないですよっ! 死にますよっ!」「うひぃぃっ!」

 一斉に黒服を着た取り巻き共が後ずさりする。バズーカ砲を構えていた奴が、真っ先に距離を取ったではないか。何だかなぁ。

 奴らはいつもの『若頭の性格』を鑑みて、『ここは撃つ』と思っているのだろうか。思っているのだろうね。でなければ、こんなに慌てて逃げ出しはしない。足元にバズーカ砲なんかをぶっ放したら、そりゃぁ『爆発に巻き込まれる』に決まっているではないか。


「おぉ。撃て撃て。そんなんで対抗出来るのならな」「本当に撃ってやろうかぁ!」「おう。撃ってみろ。ほら。あと二十秒だ」

 売り言葉に買い言葉。お互いに一歩も譲らない。

 石井中佐は腕時計を若頭に見せていた。見易いように腕を捻って、文字盤が見えるように。しかもご丁寧に、右手で文字盤を『トントン』とやって『残り時間』を盛大にアピールまでして。当然のことながら『若頭が見た頃』には、『あと十五秒』になっているのだが。


『ドゴォォォンッ!』「なっ!」「うわ撃ちやがった。スゲェッ!」

 周りが一斉に肩を竦めたのだが、若頭はまだ撃っていない。

 キョトンとして『筒先』を覗き込んだが、確かに『弾』は入っているではないか。いやいや。良い子は『そういう確認』は止めよう。


「何だ今のはっ!」『ご覧下さい。大和の主砲が一斉に発射されm』

 足元に落ちていた『スマホ』を若頭が拾った瞬間、画面の変な所をタッチしたのか映像がストップした模様。自分の太い指を退けて小さな画面を覗き見れば、そこに映っているのは『爆炎が立ち昇る戦艦大和』の雄姿だ。と、そこへ、どうやら『持ち主』らしい若造が近付いて来て、若頭と一緒に画面を覗き込むと指を伸ばす。


「何だこれ」「すいません。イヤホン落ちたらリンク切れちまって。でも凄いっす。東京湾で大和が主砲をぶっ放したすよ。全門すよ!」

 やはり『一時停止』を押してしまっていたらしい。普通スマホを持つときは『枠』を持つだろうに。全く若頭ったら。まさか持ってないとかぁ? いやまさかねぇ。と思いながら四平は『再生』押す。


『うわっ! 凄い風っ! 衝撃波で波がっ! 結構離れてるのに』

 動画配信者が、決死の思いで『生中継』をしていたのだろう。

 しかし目立たぬよう『小さなボート』だったらしく、大きく揺れてしまっている。お陰で映像も絶え間なく揺れて、煙に包まれる大和の姿が、あっという間に見えなくなってしまった。


「はぁあぁ? 四平テメェッ! こんなときになぁに見てんだっ!」

 四平は何とも『微妙な表情』だ。石井中佐と、負けず劣らず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ