表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1387/1535

海底パイプライン(百九十九)

「未確認飛行物体の撃墜完了。残存飛翔物なし。本艦に被害なし」

 対空砲を操作する係員が淡々と状況を報告し、再び沈黙に戻った。

 すると『今の報告』を聞いた副長の山本少佐が渋い顔になる。


「今の本当に『未確認』ですかぁ?」「そうに決まってるだろ」

 指摘を受けた艦長の片桐大佐は『至極当然』な表情だ。しかし『信頼できる副官として』なのだろう。苦言は続く。


「でもぉ、横っ腹に『何とか新聞』って文字が、見えたようなぁ?」

「無い無い」「ヘリが横向いたときにぃ?」「無人機だ無人機」

 その気になれば『映像で確認する』ことも出来るのだが、どうやら『艦長権限』で無人機に確定してしまったらしい。

 まぁ実際? 警告を無視して飛来していた『ドローンの類』を、全て撃墜していたのだから判らなくもない。


「まぁ、しょうがないですか」「あぁ。警告はした」

 戦闘態勢の戦艦に許可なく近付いたなら、それは『敵機と見られる』と理解した方が良い。『誰か乗ってる』とか、全然関係ないし。

 民間のヘリなんぞ、対空砲火を食らえばひとたまりもない。


「確かに。だけど『発砲』と、ほぼ同時でしたけど……」

「良いんだ気にするな。『警告した』と、記録には残っている」

 何せ戦艦大和は『戦闘区域』を宣言し、一切の飛翔物について『接近禁止』を通達していたからだ。警告したにも関わらず、『なお接近した方が悪い』と言い切る所存であるからにして。


「艦長ぉ、横須賀からの問い合わせが、すんごいんですけど……」

 すると今度は無線係が振り返った。ヘッドフォンを外すと、そこから『こら大和っ! 何をやっとるんだっ! 応答せよっ!』と響いて来そうな大音量。いや『艦長の耳』には入らないだけで、現に響いているのだが。無線係も凄く嫌そうな顔をしている。

 傍から見れば『横須賀の判断』は正しい。何せ大和が『作戦区域』として閉鎖したのは、沢山の船が往来する東京湾内なのだから。

 しかも富津岬の沖合である。よりによって、東京湾の『一番狭い所』を封鎖しているのだから始末が悪い。

 見れば沢山の船が、海上で『立往生』しているではないか。

 皆遠巻きに眺めているが、大和が怖くて仕方がない。近代化改修した大和にはミサイルだって積まれているし、何しろ主砲全門が空を向いていて、どう見ても『今から撃ちまーす』に見えるし。


「気にするな。現在隠密作戦の遂行中につき、無線封鎖中だ」

 言い切る艦長の言葉に、無線係はヘッドフォンを指さした。

「そう答えます?」「無線は『封・鎖・中』だ」「はい……」

 もう一度、今度は強めに言われて無線係はヘッドフォンを睨み付けた。だったら『ウォッチさせんな』と言いたい。しかしこれも『任務』なのだから致し方なし。

 もう『耳栓をしてから』ヘッドフォンを装着したいよ。


「主砲全門に九一式徹甲弾を装填せよ」「艦長ぉ……」

 時計をチラっと見た片桐大佐に迷いはない。何とか思い留まらせたい山本少佐とは、至極対照的な表情だ。


「主砲全門に九一式徹甲弾を装填。そのまま指示を待て」『ガチャ』

 マイクを切った主砲係が不安そうに振り返る。今頃は主砲係が『発射用の火薬』を詰め込んでいるだろう。近代化しても、何だかんだ言って『主砲の弾込め』だけは手作業に落ち着いたが故に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ