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海底パイプライン(百九十五)

「俺もなぁ、あんまり『手荒な真似』はしたくねぇんだ。えぇ大将」

 若頭がパチンを扇子を閉じ、身を乗り出して話し掛けた。すると石井中佐も身を乗り出して直ぐに応じる。顔は真顔になっていた。

 距離も近い。互いに『キス』でも交わすような距離。


「私はそんなに偉く無いよ。まだ『中佐』だ。石井中・佐・」

 自分の胸をトントンと叩き、実に丁寧な説明だ。まるで『ハァイ。ぼくちゃん。おぼえまちたかぁ?』とでも言いたげな感じ。

 若頭にも『その意図』は通じたのだろう。一瞬右目の眉を『ピクリ』とさせたときだけ真顔になったが、直ぐに笑顔へと戻った。


「いやそうだったなぁ。その『中佐さん』よぉ」

 若頭は目に前にある『石井中佐のこめかみ』を右手で突っつく。

 押されて石井中佐の頭が五ミリ程動いたが『笑顔』はそのままに。


「お前さんの『ココ』、さっきから『狙われてる』って、判ってんのかなぁ? その辺の所を汲んじゃくれねぇだろうかねぇ。えぇ?」

 若頭の態度に『余裕』が感じられたのは、『スナイパーを配置している事実』であった。ご丁寧にも話している最中に、『配置場所』を順番に指さして位置を示してやる。『どうだ怖かろう』と。

 石井中佐の右に一人。左に一人。肉眼では『銃の種類』までは判らないが、少なくとも若頭が手で示した『拳銃』ではないだろう。

 若頭も別に『悪意』があって『拳銃』を示したのではない。

 当然『スコープ付きのスナイパーライフル』で狙っているし、実は『切り札』として『真後ろ』からも三人目が狙っているのだ。


「おぉ? そぉかぁ。おや、あそこにも。これは怖い怖いですなぁ」

 石井中佐も若頭が『指さした方』に向かって、視線を向けていた。

 だから『確かに居る』と理解したはず。幾ら無線係が強くても、逆方向の二人から同時に狙われては、完全なる防御は不可能だ。

 じゃぁ『どうする』か。それを確認したいのなら、振り返って無線係に聞いた方が早いだろう。石井中佐は首だけ曲げた。


「どうしようかねぇ」「当たりますかね?」「だそうだけど?」

 無線係はニコリともせず、直立不動のまま短く答える。

 実はヘリから降り立ったとき、いや、上空から屋上を観察したときから『スナイパーの存在』は確認していた。『三人いる』と。

 位置を仮に『点A・B・C』としたとき、『会談の場所』が『三角形の重心』を示していることに、いち早く気が付く。

 屋上特有の『コンクリートの継ぎ目』が、まるで『方眼紙』のようになって見えたのも無線係にとって幸運だった。

 すると当然のように『会談場所』を『点G』と命名するが、一つ引っ掛かることがある。それは一体『何か』って?

 そんなの『会談場所』なのに、『頭文字K』でも『頭文字D』でもなく、果たして『頭文字Gで良いのだろうか』に決まっている。


「家のスナイパーは、優秀だからなぁ。ココは外さないぜぇ?」

 若頭は自慢げに『自分のこめかみ』をトントンと突いて見せる。

 するとどうだろう。たちまち『若頭のこめかみ』に、何と『赤い点』が浮かび上がったではないか。スナイパーはる気だ!

 さっきまで見えていた『赤い点』が消失し、『?』となった若頭が横を向いた途端、自分の目に『赤い光』が届いたことで理解する。

 あの馬鹿。幾ら『俺の指示した所を撃て』と言ってもだなぁ。


「俺を狙ってどうすr!」『ガンッ!』「イテェッ!」

 若頭の頭上にあった『パラソル』が大きく揺れ、風にも靡く。

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