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海底パイプライン(百八十九)

 ジェットコースター並みの急降下だった。黒井の他に冷静だったのは、シートベルトをしていた三浦少尉位なもの。反論の余地無し。


「何やってんすかっ! 勝手な判断して良いと思ってんすかぁっ!」

 代表として強い意思を持って腕を伸ばし、操縦桿を奪いに掛かる。

 多分『前に押し込んでいる操縦桿』を、グイッと手前に引けば良い。えっ免許? あるある。原付一種。どうだ凄いだろう!


「触んじゃねぇっ! 死にてぇのかっ!」「!!」

 物凄い剣幕で怒られてしまった。手を思いっきり叩かれた上に、『前見なくて良いの?』な勢いで椅子に押し付けられる。当然操縦は叶わない。そりゃそうだ。しかし三浦少尉は、士官学校に入校した時から死を恐れてはいない。今引っ込んだのは無駄死が嫌なだけ。


『チャッ』「中佐殿、翔鶴へ向かって下さいっ!」「あぁあぁ?」

 銃を構えて黒井に向けた。しかしそれでも黒井は態度を変えない。

 流石に姿勢が乱れたのを必死に直している最中で、目の前にはさっき通り越したばかりの送電線が見える。三浦少尉にだって『今発砲したら全員死ぬ』位のことは理解出来た。

 撃つなら鹿島線利根川橋梁の下を通過してからにした方が無難か。


「おい、今見なかったのかぁ?」「言い逃れですか? そんなの聞きませんよ」「あんなにでっかいのがいたのにぃ? 嘘だろぉ?」「だから言い逃れですか? 作戦中止命令が出て無いんですから!」

『マジか』と思っただけで、黒井は黙り込んでしまった。

 見えたのは『戦艦大和』だ。もし違っていたとしても、黒井が知る限り『戦艦武蔵』であることは間違いない。

 そうでも無かったとしたら? そんなの最悪だ。『大和級の新鋭戦艦』になってしまうではないか。あれだけの対空砲火に加え、対空ミサイルの十や二十は積んでいるに違いないのだ。

 それが射程距離に入ってしまったのだから、逃げるしかない。

 もしかしたら『艦載機』だって、追い掛けて来るかもしれないではないか。仮に『零式水上観測機』だったとしても、向こうの方が速いのだ。いやそんな古いのが今時あるかって?

 全然あり得る。だって『晴嵐』飛んでたし。それにもっと新しいのだったら、余計にヤヴァイ事態ではないか。

 空対空ミサイルが飛んで来るかもしれない。さぁどうする?


「三浦少尉、落ち着けっ!」「銃を降ろせっ!」「そうですよ少尉殿ぉ」「ここで発砲は勘弁して下さいよぉ」「ちょっと聞きましょ? ねっ? ねっ?」「中佐殿ぉ、何が見えたでありますか?」

 ブラックホークの姿勢は落ち着いていた。黒井の顔も。しかし引き返すつもりは絶対に無さそう。怯えるように肩を竦め、ジッと前を見たり計器を見たりの繰り返し。そんな様子に一同は思う。


『きっとロックオンされそうな時って、こんな感じなんだろうなぁ』

 銃を構えていた三浦少尉にも、そんな緊張感が伝わったのだろう。

 ゆっくりと銃をしまう。そもそも安全装置は掛かったままだった。


「戦艦大和だ。この世界には現存してるのか?」「当然です。見えたんですか?」「あぁ。もしかして『お仲間』だったりするぅ?」

 黒井は引きつった笑顔で振り返る。『そうであって欲しい』と願っているのだろう。しかし返事は余りにも無情だ。


「んな訳ないです」「だよねぇ最悪!」『こちらカマイタチ。作戦中止。繰り返す。作戦は中止!』「あっ」「えっ」「ホラァァッ!」

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