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海底パイプライン(百八十四)

 九十九は驚きの余り思わず一歩前に出た。その勢いに押され辰也は一歩後ろへ。その横で四平だけはゲームに夢中。

 しかしまぁ随分と早まってくれたのだ。そりゃぁ大被害だし恨んでいるのもあろうが、それは余りにも軽率過ぎる。


「宦官ゲーム、やっちまったのか? ガシッと。それはまずいゾ!」

 一体何をしてくれちゃってんのか。今の相手は『軍隊』であると、ちゃんと認識しているのだろうか。

 もし怒りに任せて遠慮なく突入されでもしたら、被害がこちらにまで及ぶとは思えなかったのか? うーむ。辰坊じゃ無理かも。


「えっ、そこまではしてませんよぉ。うわそれ、マジですかぁ?」

 宦官が何かを知らぬ辰也も、九十九の『手の動き』で全てを理解した。『ナニを引っこ抜くこと』なのかを。目を丸くして。


「マジだよ。昔の支那ではな。皇帝様の女に手を出せないように」

「へぇ。支那って怖い所なんですねぇ。今でもぉ?」「知らねぇよ」

 また話が変化しそうになって、九十九は手を横に振って冷たく打ち切る。辰也は『あそこの話』ならと、興味津々だが。


「じゃぁ辰坊ぉ、ドコ切っちまいやがったんだぁ? 小指か? 耳か? だとしたらヤヴェことになるから、切ったの持って来いっ!」

 全く。のんびりレバ刺しも食っていられんのか。これだから困る。おまけに保険も効かないのに、確実に治せとか言って来るし。

 九十九は『手術の準備』をしようにも、寝台に広げられた『レバ刺しを何処に片付けるか』で迷うばかりだ。こうなったら覚悟を決めて、机の上を片付けてやるしかないか。


「いや先生ぇ、まだどこも切ってないっす」「治療費はそっち持ちで付けとくからなっ! 全くぅ。辰坊の入院費だってまだ貰ってないのに、面倒ごとばっかり持ち込みやがってっ! チキショォォッ」

 九十九はイライラしていて、辰也の話を全く聞いていない。寧ろ『切るだけの奴は気楽で良いよなぁ』とさえ思っている始末だ。


「だから先生ぇ」「うるせぇっ! 邪魔すんなっ! 早く連れて来いよ。早くしないとくっ付かねぇぞっ!」「まだですっ!」「良いから連れて来いよ!」「だからまだだっt」「あぁ? 尋問なんかしてる暇があったら、さっさと連れて来いって言ってんだよっ!」

 九十九が余りにも大きな声でブチ切れたので、診察室から余韻が消えるまでに三秒も掛った。

 ゲームに集中していた四平だが、九十九が切れたのを見たのは初めてだったと見えて、思わず『ビクンッ』となる。その瞬間、イヤホンが耳から落ちて床に転がると、ゲームの音がこだまする。


『テレレレッテレー。レベル上限に達しました♪』

「先生、捕虜は無事らしいですよ?」「あぁ? 本当か? 辰坊!」

 九十九に報告したのは四平だ。九十九は一瞬四平を睨み付けたが、そのままの顔で辰也に横スライド。後頭部にだけ残った白髪が『キュッ』と揺れたが可愛くない。ボサボサだから天使の輪も見えぬ。


「えぇまだ」「あぶねぇ。良かったぁ」「あぶねぇ。良かったぁ」

 九十九と四平のセリフがシンクロしたのに気が付き、辰也は思わずイヤホンを拾う四平の方を見てしまう。そこで九十九が一歩前へ。辰也の肩を押さえて強く揺する。まだ間に合うか?

「何もしてないな?」「えぇ来る前に『絞めとけ』って」「オイッ 早く止めに行けっ! 早くっ!」「えぇっ」「四平っ行くぞっ!」

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