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海底パイプライン(百五十九)

「隊長っ! どっちから行きますか!」「おっ来たか。こっちだ!」

 筒先を持った消防隊員が走って来た。後ろからもう一人来ていたが、ホースの曲がり角に設置した養生を気にしてか直している。


「何だ竜司、お前、今は隊長なのかぁ」

 辰也は意外そうな顔をしている。組の中ではまだまだ若手だが、地上では随分出世したみたいではないか。

 竜司にしても、前にいた爺さんが薬物で逝っちゃって、繰り上がったに過ぎない。出番が無い消防隊の士気は想像の三倍は低い。


「へい。辰兄ぃがいらっしゃる現場に、こんな若輩者が出しゃばった形になりすいやせんが、こっから先ぃ、現場仕切らせて頂きやす」

「おう専門家に任せた。しっかりやりぃ」「へい。お邪魔致しやす」

 組の立場を竜司の方がわきまえている。一礼して早速筒先を先導する。足場を確認しながら一緒に移動して、角度の指示をした。


「しっかり持ってろ。よし、一番ホース、開栓!」「一番開栓っ!」

「一番開栓っ! 一番ホース開栓っ! 早くしろっ!」

 正解率百%でないと困る伝言ゲームが始まった。筒先を押さえる。

「水圧凄いからな。しっかり持ってろっ!」「はい」「ダメだもっと強く! 俺が揺すって動くようじゃダメだろっ!」「はいっ!」

 筒先は新人か、それとも初出動か。見た目訓練不足は否めない。

「辰兄も下がって!」「お、おう」「幾ら辰兄ぃでも、『コレ』無いんで。すいませんねぇ」「判ってる判ってる」

 竜司は防護服を指さして辰也に会釈していた。周りの目もある。

 立場上命令調で言ってしまったのを気にしてか、後からフォローを入れているが、辰也だって『消防隊の指示に従う』位の常識は有している。するともう一本ホースが走って来たではないか。

 竜司を見れば、お辞儀をしながら『もうちょい後ろへ』と合図しているので、その指示に従うのだってやぶさかではない。

 結局辰也は、二本目のホースよりも外へと追いやられる形に。

 すると一本目のホースが『ボコボコボコッ』と膨らみ始めた。


「来るぞっ! しっかり持ってろっ! 絶対離すなっ! 離すと怪我するぞっ!」「はいっ!」『ボコボコボコッ! ピシャーッ!』

「一番放水開始っ! ほらこの角度でっ! 体で押さえろっ!」

 竜司は二番ホースの方に行きたいのだが、筒先担当がビビッて返事すらない。やっぱり返事だけで完全に訓練不足だ。


「俺は離すぞっ!」「はいっ!」「良いかっ!」「ダメですっ!」

 離そうとした瞬間、竜司はズッコケた。筒先は離さないが。

「マジかぁ。おい四平っ! ちょっと来いっ!」「はーい」

 仕方なく四平を呼んで筒先を持たせる。そっと二人に持たせた所で、竜司はもう一度『放水先』を微調整した。


「頼んだぞっ!」「へーい」「はいっ! 任せて下さいっ!」

 何だよ。現金な奴。さっきは『ダメ』と言ったのに、二人になった途端これかよ。確かに筒先は『通常二人で持つ』のだが、今は人手不足なのだ。力自慢ばかりなのだから、一人でも行けるかと思ったのに。それは浅はかな考えだったようだ。喧嘩が強くてもダメ。筒先を持つには、それなりに訓練しないとダメか。

 竜司は困った顔をしながら二本目の筒先へと急ぐ。ホースをぐるっと回すので、二番ホースの方が暴れるだろうから。

 竜司の一部始終を見ていたのだろう。二番ホースに辰也が来た。


「手伝おうか?」「あぁ辰兄ぃ。実は若頭が呼んでたんですけどぉ」

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