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海底パイプライン(百五十八)

「うわっここだっ」「ホース引っ張って来いっ!」「はいっ!」

 現代版の防護服に身を包んだ、本物の消防隊がやって来た。消防車までは入って来れないのか、どうやらホースを曳き回すらしい。

 指示を受けた若い男が手を振りながら現場を離れる。角を曲がった所で『おーい、こっちだぁっ!』の声が小さく聞こえて来た。


「こりゃひっでぇなぁ」「何をどうしたら、こんなんなるんやぁ」

 二人残って、ホースの水を何処に掛けるべきかを検討し始める。

 時間も水も無駄には出来ない。竜司と四平の二人は、現場への道すがら相談しながら走って来た。建て直しする所は燃やしてしまっても、残す所に火が回らないようにしなければと。

 しかし現場を見た途端思ったのは『燃え過ぎ』だ。そんな都合の良い取捨選択は一切していられないと悟るのみ。兎に角消さねば。


「あっ辰兄!」「おう竜司ぃご苦労さん。すまんなぁ。連れてけ!」

 軍人二人を源次郎に任せて、辰也が振り返った。

「これ、どうしたんですかぁ? 『寝たばこ』にしてはぁちょっと」

 竜司は顔を顰めてタバコを吸う真似をしながら首を傾げた。

 しかしそれは辰也だって同意見だ。昔『誰かさん』が寝たばこでやっちまったときから、改めて『禁煙』のお触れが出ていた。

 それなのに『この有様』である。後で報告する立場になってみろ。


「俺じゃねぇよっ! コイツらだよ!」「はぁ?」「寝たばこぉ?」

 急ぎ辰也は連れ去られる軍人二人を指さした。すると四平が竜司の陰から首を伸ばし、余計な一言を加えたではないか。


「んな訳ねぇだろっ!」「いてぇ」「辰兄ぃ、すいません」

 辰也がぶん殴る前に、竜司が強めにぶっ叩いた。痛そうにしているが、痛いのは竜司の拳の方。だって『ヘルメット』があるし。


「次はぶっ殺すからなぁ」「良く言っときますので」「すいません」

 と、ここまでが『お決まり』か。反省を口にした四平に『反省の色』は微塵も感じられない。口を尖がらせながら軍人を指さした。


「こんな格好をしてぇ。どこの茶屋の嗜好っすかぁ? 流行りぃ?」

 今は自分だって『時代錯誤な恰好』であろう。そんな四平から見ても『江戸時代の花街に軍服姿』は、異質に映るようだ。

 残骸となったヘリの方を指さした辰也だったが、四平の方を向いた。鼻からフッと息が漏れると苦笑いで話す。


「まぁ幕末なら、有り得たかも知れねぇがなぁ」

 首を傾げているのは、陸軍の軍服がどのように変遷したのかを知らないからだ。多分『サーベルでもぶら提げていれば』と言いたいが、それはどの道『お預かり』となるだろう。


「あっなるほどぉ」「なるほどじゃねぇっ!」「いてっ!」

 何だか『癖』になっているのではなかろうか。突然殴られては、間抜けな四平だって驚きはする。いや、だから殴られるのか。


「何すんですかぁ」「すいません」「いや、今のは知らねぇぞ?」

 四平の尻拭いをしている竜司にすれば『取り敢えず』なのか。

 しかし辰也はボソッと呟いた後、既に『火元』の方を見ていた。


「ヘリが突っ込んでな? 燃料に引火したんだが、消せるか?」

『ドーンッ!』「うわっ」「おいおいぃ」「残弾もあるんですか?」

 辰也は答えられない。もしあれば自分が真っ先に食らっている。

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