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海底パイプライン(百五十三)

「大丈夫ですからぁっ!」「診療所の先生、おっぱいデカいですよ」

 権太の案内に、源次郎も同意して頷いて見せる。すると客は『それなら……』と、急に大人しく。あらら。一緒に行ってしまった。

 確かに留子先生のおっぱいはデカいが、『垂れてない』なんて誰も言っていない。無論、言ったら殺されるし。

 源次郎は『現場』に向かって走り始めた。何が起きているのかはサッパリ判らないが、人手は要るに決まっている。特に力持ちの。

 何しろ辰兄自らが現場に残って、人命救助をしているのだから。


「救急車はまだかっ!」「来ねぇよっ! 担いで行けっ!」

 角を曲がっても現場が見えない。既に人だかりが出来ていた。

 半壊して炎上中の妖狐楼から逃げ出した客では無かろう。着物の柄が違う。それに嫌な音がして、いつ崩れてもおかしくない状況だ。


「テメェこの野郎っ!」「あぶねぇなっ!」「いてっ!」

 見れば対面の雲上閣には、でっかい換気扇がぶっ刺さっているではないか。窓からそれを見上げている遊女が多数。『もう営業どころではない』のだろう。つまり無事だった客が『人命救助』と『野次馬』を兼ねて通りに溢れていると。それにしても人が凄い。


「おい源次郎っ! そいつを止めろっ!」「兄貴?」「白い奴っ!」

 群衆の頭一つ飛び抜けて、瓦礫の上から辰兄の顔が見えた。

 手を伸ばして『そいつ』も指しているようだが、肝心の『白い奴』は判らない。当たり前だ。そんな『白装束』じゃあるまいし、『白い柄の着物』を貸出している茶屋なんて、少なくとも記憶には無い。


「どけっ!」「走れっ!」「!」「源次郎っ! 押さえろっ!」

 源次郎は一瞬で理解した。群衆の中から『白い奴』が現れたのだ。

 辰兄とやり合ったのか衣装は着崩れしているが、それは吉原では当然のこと。しかし『軍服のまま吉原に来る』なんて、何て躾が出来ていない奴らだ。辰兄も大分ご立腹な様子。万が一にも取り逃がせば、これはもう『正座して説教』では済まされない。


「おりゃぁっ! 死ねやっ!」『グッ!』「ラリアットォォォッ!」

 一人目の男に、顎下から突き上げるように右手をかました。

 モロに入ったのが判る。『当たって振り抜く段』になってから『技名』をコールしてやったが、それを『ちゃんと聞いていたか』を確かめる術は無し。一瞬浮いた頭の重みを腕に感じた後、今度は下に向けて叩き付けるように振り抜く。これは決まった。手応えあり。

 白い奴は地面に転がったであろうが、暫くは動けまい。


「臼蔵っ! テメェこの野郎っ!」「なぁんだぁ、お前らぁっ!」

 拳を固めた二人目が源次郎に襲い掛かる。源次郎は直ぐに『ファイティングポーズ』を取った。野郎の目を見て身構える。

 源次郎は一目見て判った。コイツは『本物の軍人だ』と。勿論『今倒した奴』だって軍人仲間なのだろう。倒せたのは『偶然』だ。

 何せ後ろを気にして『よそ見をしていた』のが大きい。振り返り際に、いきなりラリアットを食らっては自分だって無事では済まぬ。

 だとすると、きっちり『受け身を取っている可能性』は否定できない。つまりグズグズしていると『二対一』になり不利だ。

『シュッ』『シュシュッ』『バッ!』「おっとぉ」

 左ジャブで警戒させてからの、いきなりの『蹴り』とは。こいつ軍人の癖に随分と『喧嘩慣れ』してるじゃねぇか。

 しかし舐めてもらっちゃぁ困りますぜ。ヘヘっ。軍人さんよぉ。


「お前ら、グルっと取り囲めっ!」「おぉっ!」「喧嘩だぁっ!」

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