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海底パイプライン(百三十六)

 生きた心地がしない。目の前にある『銃口の数』が、尋常ではないからだ。大抵の人は、アサルトライフルの弾が一発当たっただけで痛い思いをするか、その痛みを感じることなく死んでしまう。

 そんな弾を連射出来る銃を持った男達が目の前に大勢居て、その内の何人かがヘリの中に突入して来る。黒井は思った。

 悪いことをした『現場を押さえられる』って、『こういうこと』なんだなぁと。やっぱり『ヘリを盗む』のは、犯罪だったのだ。


「大佐っ! ご苦労様ですっ!」「おう。随分な歓迎じゃねぇか」

 雰囲気を察して黒井は振り返った。一応両手は上げたままだ。

 するとそこに見えたのは、随分と和やかな光景。突入責任者らしい人物と黒田が、固い握手を交わしている。


「いやぁ、一応『警戒せよ』って、ご命令ですから。如何でしょう」

「あぁそうだっけぇ? まぁ『訓練』にしては上出来じゃないか?」

 どうやら黒田は『取り囲め』と自ら命令したことを、すっかり忘れてしまっているようだ。流石はじじぃ。もうボケたか。


「すげぇ。これがブラックホークかぁ」「いやぁ、本当に来たなぁ」

 更に後ろから声が聞こえて来て、黒井は両手を上げたまま首を更に伸ばした。すると見えたのは、一般兵達が『物色する姿』だ。

「ここ何だ?」「俺に聞くなよ。俺だって初めてなんだからさぁ」

 ヘリの隅々を『物色』している。全ての蓋を開けたり、転がっている『何か』を一つづつ拾って頷く。


「何か落ちてんな。何だ? ハンマーって」「知るか。これは?」

 黒井は完全に『放置』された状態であるが、本人は今だ『機長の気分』でいる。だから『勝手に乗り込んで来て何だ』と思っていた。

『ハンマー? 何だそりゃ。そんなのは俺が聞きたい。いや今拾ったのは『空薬莢』ですけど? 何の意味があるのかは不明』

 観察しながら色々考えていたのだが、結局『あぁ、これから掃除してくれるのだろう』と思って納得することにした。

 どうせだったら『点検』も頼みたい所だ。残念ながら『整備マニュアル』は無いけれど。そこを何とか。


「彼は『整備』も可能ですか?」「出来ると思うぞ?」「無理です」

 黒井と最初に目が合ったのは『責任者の男』だ。

 ちゃんと指を揃えて丁寧に示されたのを見るに、この後決して『ぞんざいな扱いにはならない』と、期待せざるを得ない。

 何せ外からは、まだ銃口が睨みを利かせているのだ。人に何かを頼むならば、先ずは『銃口を降ろせ』との指示を希望する。


「何だお前。操縦は出来る癖に、整備は『からっきし』なのぉ?」

 まるで『出来ないのが意外』みたいな顔で、言って来るではないか。それには温厚な黒井もぶち切れざるを得ない。

 両手を降ろしたかと思うと『機長の気分』のままにぶちまける。


「当たり前だっ! 大体操縦だって『無理だ』って言ってんのに、じじぃが無理矢理やらせたんだろうがっ!」「だそうですけど?」

 黒田は黒井に言われてもずっとニコニコしていた。それが一言添えて振り返った瞬間、事態が急変する。

 ヘリの中で一斉に『カチャッ』と金属音が鳴り響いていた。人数分の『何か』が。それは黒井も『地上訓練で結構聞いた音』だ。

「拘束しろっ!」「何て奴だっ!」「こっちへ来いっ!」「先ずは口の利き方を教えてやる!」「うわっじじぃっ!」「こいつぅ!」「おい止めさせろっ! じじぃっ!」「まだ言うかっ、黙れっ!」

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