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海底パイプライン(百三十四)

「何だって? パイプカットォ?」「どう言う聞き間違えだっ!」

 また橋の下を潜ったのだ。忙しいときに『危ない話』をするな。

 と、黒井は言いたい。しかし今更気が付いたのだが、この世界には本当に『首都高速』がない。荒川沿いにあるはずの『C2』は影も形もなく、中川と併流する区間になると空が広い。


「硫黄島からパイプラインがあるんだっけ?」「そうだ」

「タンカーで運んでんじゃないのかよ」「使う量が凄いからな」

「でも、何処を通ってるんだ? 結構深い所もあるんだろう?」

 ちらっと黒田の方を見て、直ぐに前を向く。黒田が前を向いたまま『フッ』と吐き出したのを見て、黒井はもう一度見た。


「だから、『探しに』行こうなっ!」「ぜってぇ行かねぇっ!」

 黒井の声が随分と上擦っている。空の次は海かよ。海上でだって酷い目に遭ったのに、今度は海中だと? 冗談も休み休み言え。絶対『碌な目に合わない』に、決まっているではないか。


「何だよいけずぅ」「何だよじゃねぇよっ!」「一緒に行こうぜぇ? ダイビング、楽しいからよぉ」「ふざけんなっ! 海底まで何百メートルあると思ってんだ」「良く知らねぇ」「調べてから誘えっ!」「じゃぁ一緒に『探す所』から頑張ろうか」「いやいやだったら地上じゃダメなのぉ? さっきもパイプラインの一部なんだろぉ?」「あそこは川崎で加工した後の『枝管』だからダメ。俺達が狙うのは『本管』だからさぁ」「そんなぶっといのを爆破したら、海洋汚染になっちまうだろぉ?」「おっ、じゃぁバルブ閉める作業を、一緒に手伝ってくれるってことね。いやぁ。流石だなぁ」「まだ『やる』だなんて、ひとっ言も言ってませんけどぉ?」「ええぇ」

 何てこった。黒井はしばらくの間『渋い顔』を黒田に披露するが、黒田はずっと笑顔で『相棒』を見つめているだけ。期待を込めて。


「大体何で『日本の生命線』をぶった切らないといけないんだ? 世の中『ガリソン』で回っているんだろ?」「そこだよ」「は?」

 黒井には意味が判らない。大体『ガソリン』じゃなくて『ガリソン』が判らない。最初に見たときは、完全に『誤植』だと思ったし。


「俺の勘だと、ガリソンを使っているから雨で溶けるんだと思う」

「えっ? マジで? 良かったじゃぁん。『原因』が判ってさぁ」

 聞いた話によると、雨で溶けるのは『日本人だけ』らしいのだ。

 しかしそれを言ったら、日本に来ている『外国人』は? 溶けるのか、溶けないのか。アンダーグラウンド暮らしが長かった黒井は、まだ『外国人』を拝んではいない。特に『パツキンボイン』とか。

 しかしまぁ、普通に考えて『試したくはない』と、思うだろうが。


「いや、これが『原因』までは、判っていない」「ガクッ」

 口にして肩を落とす。しかしヘリの姿勢までは傾けなかった。

「何だよ。研究したんじゃねぇの?」「研究は『禁止』されてんだ」

「はぁ? 意味判んねぇなぁ。皆、困ってんだろぉ? 研究しろよ」

「いやそれが『研究する』となぁ? みんな『不慮の事故』でなぁ」

 黒田は口を真横に引いて半開きに。両肘を曲げ、顔の前で両手首をダランとしてブラブラさせている。つまり『死んでしまう』と?


「おいおい。随分と物騒だなぁ。その話し『マジ』なのかぁ?」

「今まで『俺の部下』も、それで何人もられちまった」

 ちらっと見た黒田の顔は真顔だ。しかし黒井が見ているのが判って、直ぐに笑顔へと戻る。目は『報復してやる』のままで。

「そこ左だ」「んな、また狭い所かよ」「突っ込むの好きだろぉ?」

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