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海底パイプライン(百三十二)

 ここまで来て黒田は、まだ『黒井が参戦する』と思っているのか。左右に激しく揺れるヘリの中で、実に楽しそうだ。

 一方の黒井は混乱していた。聞き間違えかと思ったのも当然。


「空母を『とる』って、じじぃ、写真でも撮りに行くのかぁ?」

 仮にそうだとしても、黒井は絶対『お断り』だ。

 百歩譲って『停泊中』ならまだしも、『航行中』の空母に接近なんてしてみろ。直ぐに撃たれてしまう。いや、接近自体が不可能だ。

 そもそも『単独航行』なんてする訳ないし、輪形陣を組んだ艦隊の中央に、ガッチリ守られた状態なのだから。


「何だそりゃ。詰まんねぇ冗談だなぁ。『奪いに行く』の獲るだよ」

 黒井は水平飛行に戻った姿勢を崩さないように、しかし再度驚いて横を見る。信じられない。黒田の顔は笑っているが、目はマジだ。

 本当に『輸送ヘリ一機で空母を鹵獲しに行く気』なのか。死にたいのなら遠慮せず、是非『一人で』死んで欲しい。


「何だよ。『奪う』って字と『獲る』って字は、違うじゃねぇか!」

 どうでも良いことを突っ込むに留めた。何だか黒井からごちゃごちゃ言っても、『黒田の作戦』はどうせ止まらないのだ。

 これは『面倒なことになった』と思いながら、黒井は前を向く。こうなったら操縦に集中だ。良い感じの障害物があったら、『黒田の方だけぶつけてやろうか』と思いながら。


「おぉ? やっぱりお前も違いが判るかぁ」「どっちでも良いよ」

 黒田は『冗談を言う程の余裕がある』と思ったのだろう。ニヤケながら黒井を指さした。黒井は一瞬黒田を見るが、ため息交じりに前を向く。すると黒田も前を向いて『作戦』を話し始める。


「まぁ、実は『空母』と言っても『往年の空母』でなぁ? 今は『標的艦』として鹿島港に居る奴だ」「あぁ、この前見た奴らかぁ?」

 言われて黒井は思い出す。晴嵐を操縦して利根川を遡上した際、遠くに見えた光景を。そこには黒井の世界では『とっくに轟沈した空母』が、揃い踏みだったのだ。遠目に見れば壮観である。

 蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、そして『先代加賀』まで。


「お前の世界じゃどうか知らんが、少なくとも我が大日本帝国海軍は、今まで『空母を沈められたこと』なんて、無いからなぁ?」

「マジすか?」「当たり前だろぉ。大体空母ってのはなぁ、護衛の艦隊に守られてだなぁ」「ハイハイ。『輪形陣の真ん中に居る』って言いたいんでしょぉ?」「何だ。知ってんじゃん」「いや、そんぐらい知ってますよぉ」「F2は空母艦載機じゃないのにぃ?」

 黒井が渋い顔で睨み付けたら、黒田には指さされて笑われてしまった。やっぱり黒田はいちいちムカつく。

 イラついた黒井は、顎で下を指しながら聞く。


「もしかして、『F2だと着艦出来ない』から、『コイツ』にしたんじゃねぇだろなぁ?」「おっ、良い勘してるねぇ」「マジかっ!」

 だとしたら黒田は『F2も調達可能』ということではないか?

 無い無い。有ってたまるか。『亡命して廃棄』じゃあるまいし。大体『整備員が居ないジェット戦闘機』なんてどうする。

 黒井は突然『仲間の顔』を思い出していた。元気で居るだろうか。

 この世界に来る直前、黒井は複座のT4で訓練飛行をしていた。

 そこでトラブルが発生し、新人を先に緊急脱出させる。黒井はその後も操縦を継続し、地上十五メートルで緊急脱出した。

 気が付いたら何故か『電柱の上』に、引っ掛かっていた訳だが。

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