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海底パイプライン(百二十二)

「あのぉ『私書箱』って何ですか?」「知らない?」「はいぃ」

 確かに金持ちでも、郵便物が毎日届くような人じゃなければ、個人で使うことはほぼ無いだろう。それに今の時代、東京二十三区内なら小包は自宅まで自動で届く。千葉じゃまだまだ無理だけど。


「簡単に言うと、自分の郵便ポストだけを他人の家に置く感じ」

「へえぇ。それで『家の住所』は教えないんですかぁ」「そそっ」

 納得して貰えたようだ。朱美は『利用してみようかしら』と思って考え始めたのだが、直ぐに『無駄だ』と思って止めた。

 実家の住所を隠した所で意味が無い。地元では凄く有名で、例え住所が間違っていても、名前さえ書いてあれば届いてしまう。


「でも、住民税とか源泉徴収で扶養の申告とかは、どうしてるんでしょうね。会社だってそういう情報必要だから、集めてますよね?」

「あぁ。それも全部纏めて、確定申告しているらしいよ」「ええっ」

 そこまでして会社に『個人情報』を渡すのが嫌なのだろうか。


「だから、確定申告するシステムが使い辛いと、担当者呼び出してすんごい文句言っているらしい」「ええええ? 本当ですかぁ?」

「うん。結構細かいコトまでグチグチ言われるみたいで」「うわぁ」

 身内が開発したシステムであっても、『現場で使う側』に回ったら、それは立派な『お客様』である。


「この間、担当している奴に合ったときに『面倒臭いから、お前何とかしろって』言われちゃったよ」「うわぁ。後ろの席だしぃ?」

「そう。だからって言われても困るんだけどさぁ」「それは確かに」

「お陰で二徹して直す羽目になっちゃって」「はぁ? 手伝った?」

「いやぁ。小数点第六位で四捨五入するかどうかで、最後の一円が合わなくなっちゃうからさぁ。あれはあれで、なかなか大変だった」

 朱美には『手伝った動機』も『手伝った内容』も全てが謎だ。

 しかしそれよりも今は、『高田部長イーグルに嫌われているかどうか』が問題である。裏話はまた別の機会にして。


「ご苦労さまです。で、あのぉ、私って嫌われていると思います?」

 強引に話を戻して『ストレートな質問』をぶつけてみた。すると意外にも、琴坂課長は飄々とした顔で話始めたではないか。


「あの人は基本『誰も信じていない』から、扱いは誰も一緒だよ?」

「そうなんですかぁ? 特に『仲が良い』とかは?」「え、俺ぇ?」

 朱美は首を傾げて質問しながら、ヒョイと目の前を指さしていた。その指を見た琴坂課長は自分自身を指さしたが、その手を横に振る。


「少なくとも『俺』は違うなぁ」「じゃぁ本部長ペンギンとは?」

「絶対違うと思うよ?」「えぇえぇ? いつも一緒なのにぃ?」

 琴坂課長の目は節穴か。朱美には到底信じられない。あれを『仲良し』と言わずして、じゃぁ何を『仲良し』と呼ぶのだろうか。

「いつも一緒だからって、別に『親友』って訳じゃないでしょうが」

「いやいやいやいや。だとしたら、それは寂し過ぎます。絶対無理」

「んなこと言ったってさぁ『信頼』と『親友』って『違う名詞』なんだからさぁ、別に違ってたって良いじゃん」「何その理屈……」

 何か『コイツ等』は人間ではなく『改造人間』なのではないだろうか。いや、既に人間でもなく『機械』である可能性も捨てきれない。実は血の代りに『潤滑油が流れています』みたいな。


「だから『朱美さんに任せよう』って仕事があったら、きっとお声が掛かるよ。ほら、今日みたいな感じでさぁ」「そぉお言うぅ!」

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