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海底パイプライン(百十九)

「はい。掃除するみたいだからプレゼンしゅーりょー」「えぇっ!」

 演台の上に置いてあったノートPCを、宣言と同時にパタンと閉じた。当然スクリーンに映し出されていた映像も消える。

「もうちょっと良いじゃないですか」「そうですよ。もうちょっとエロいの見せて下さいよぉ」「デモ画面、まだあるんでしょぉ?」

 時として人は『我儘に生きる生物』である。にわかに騒ぎ出す。

 しかし琴坂課長は右手を大きく横に振りながら、もうノートパソコンを小脇に抱えていた。プレゼンは無事? 終了である。


「じゃぁ行きましょうか」「はい。ご主人さま」「……」

 部屋を出るまでが試験だと思っている朱美は、まだ『人形ドール』を演じている。いや、ちょっと『ちびったか』どうかが心配で、それ所ではないのがホントだ。


「あのぉ、そのゲームは、いつリリース予定ですかぁ?」

 出口で呼び止められて琴坂課長が振り返った。見えた顔は意外にも、『お前、何を言ってるんだぁ?』である。会議室は一瞬にして静まり返っていた。全員『リリース日』が待ち遠しいらしい。


「そんなの『君達の頑張り次第』に決まってるだろう?」「はぁ?」

「リリース日未定なんですか?」「早くプレイさせて下さいよ!」

 何でそんなことを言うのか。会議室を一旦出掛かった琴坂課長が、ため息交じりに戻って来る。


「いや、これから君達が作るんだよぉ。徹夜でな」「えぇえぇっ!」

「徹夜は止めましょうよ」「働き方改革!」「ホテルを用意しろ!」

 再び騒ぎ出したが琴坂課長は薄ら笑うだけ。『判った判った』と大きく手を縦に振って会議室を静かにさせる。


「じゃぁ『徹夜でも頑張れる奴だけ』を、開発メンバーにするよぉ」

「えぇえぇえぇっ!」「そうやってブラックな世界に引き込もうと」

 今度は手を横に振っている。決意は変わらないようだ。右手を口に当てて、大きな声で『釘』を指す。


「ちなみに『開発情報を漏らした奴』は『楽園送り』だからなぁ?」

「楽園って何処ですか?」「南の島ぁ」「ハワイ?」「んな訳ねぇ」

「じゃぁ何処なんですかぁ?」「判った。仁右衛門島だ」「近けぇ」

「当たった?」「全然違うよ。『そんな近くじゃねぇ』ってこと!」

「だから何処?」「んな『本社直轄地』に決まってんだろうがぁ!」

「硫黄島だぁっ!」「うわ最悪」「帰ってこれるのかぁ?」「無理」

「もう既に一人『楽園送り』で逝ったらしいからなぁ」「まじで?」

「マジマジマジマジ」「マジかぁ」「えぇじゃぁどうしようかなぁ」

「何だ『漏らすの前提』かよ。言っとくけど『ネット』ないからな」

「まじでぇ?」「マジマジマジマジ」「じゃぁ『エロ』も無いぃ?」

「当たり前だ。有る訳ねぇ。そもそも『女』が居ねぇ」「最悪だぁ」

「まっそこんトコ、良く考えて『プロジェクトに参加』するように」

「……」「どうするぅ?」「うーん悩む」「ちょっと考えるわ……」

「ちなみに『このプレゼン』を漏らした奴も『同罪』だからなぁ!」

 最後に『大切なこと』を宣言して、プレゼンは終わった。

 今まで『どんな開発』をしていたのやら。いや、殆ど『プログラマー』ではないから、参加しても『絵師』か『テストプレイ』しか出来ないだろうけど。やはり『情報漏洩』が主目的だろうか。

 まぁ良い。聞く所によると、硫黄島も『人員不足』らしいから。主に『敵役』とか『的役』とか『死体役』とか。それは足りてるか。


「あのぉ私も開発に、参加したいんですけどぉ?」「えっマジ?」

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