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海底パイプライン(百十八)

『カラァン』「良ぉし。撤収だ」「えっ、当たったんですか?」

 ハンカチで薬莢を包み、M95を片付けているときだった。

 まだ双眼鏡を覗いている後輩に、『失礼なこと』を言われたと思ったのだろう。狙撃手スナイパーの手がピタッと止まる。


「とぉ然だ。ふざけたこと言っていると『痛い目』に合わすよ?」

 握り締めた薬莢の先をちょこっと出して、失礼な後輩の頭を目掛けて軽く振り下ろす。風切り音と共に、手の動きが消えた。

『カッ』「申し訳ございませんっ! お姉さまっあっ!」『ピタッ』

 今のが『選択肢』だったのか、それとも『警告』だったのかはどうでも良い。双眼鏡を持ったままの観測手スポッターは、屋上の床に這いつくばっていた。パンツは見えていない。


 今日は『目立たぬ格好で来い』と言われたので、全身をビシっと迷彩服で決めて来たのだが、何故か浮いてしまっている。

 しかしヘルメットを被っていたのは正解だ。もし被っていなかったら、今頃頭から血が『ピューッ』と噴いていたことだろう。

 寸止め? いや、しっかりと当たっている。ほら『穴』が。

 ヘルメットはもう使い物にならぬ。しかし、顔が屋上にめり込まなかっただけでも感謝せねばなるまい。一応女の子だし。


「今度ふざけたことを言ったら、容赦しないからね」「はい」

 観測手スポッターがのそのそと起き上がる。話に聞いていた以上に『気が短い』ようだ。手を出すのも異様に速く躊躇も無い。

 これが『ファルコンの仕事か』と改めて思う。『偉大な先輩』と聞いてはいたが、正直ここまでとは思っていなかった。


「ほら持って。私は帰るから」「おぉお。はい。ご苦労様でした」

 ケースに入ったM95をホイと渡されたのだが、真間少尉ザギンのママには少々重たかったようだ。ふらついている。


「後『ボケナスパパ』によろしくね」「はい。申し伝えます」

 何とか気を付けの姿勢になって、直ぐに頭を下げた。『ボケナスパパ』とは、上官である『依井大佐』のことだ。

 今は黒豹部隊ブラック・レパードの部隊長に昇進し、コードネームは『ゲムラー』となっているのだが、ファルコンが所属していたときのコードネーム『ボケナス』のままとは。

 しかし真間少尉ザギンのママは、怖い先輩を前に深々とお辞儀をするしかなかった。否定なんて出来るはずがない。

 コードネームの最後に『パパ』と付けたのは意味深である。


「会話録音してあるよね?」「そうなんですけどぉ」「なぁにぃ?」「いえあのぉ」「だから何ぃ?」『シャッ』「ヒィィッ」『シャッ』

 いつの間にか手にナイフを握り締めているではないか。しかも逆手。完全に想定外であり、今ので二回死んでいる。

「これが本当に『最高機密』なのでしょうか?」「はぁ? 死ぬ?」「いえあのっ、決して疑っている訳ではなくてですね……」「あんた『今のプレゼン』が『ホークだ』っていうの、判ってるぅ?」「えぇえぇっ? 『ホーク』って、あの『死神』のですかぁ?」「そうだよぉ。今度お宅に『お邪魔する』ように言っとくね。喜べ」「ヒィィッ! 勘弁して下さい!」「それはホークに聞いてぇ?」「それも勘弁して下さい……」「良いかい? 情報漏洩は即『死』だからね? データの取り扱いには、十分注意するんだよぉ?」「はいっ!」「一応ボケナスに首洗って待ってろって言っときなぁ」

 ファルコンは笑いながら言い残し、屋上から飛び立った。

 早く帰らないと『デカンタ刑事』が始まってしまう。

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