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海底パイプライン(百十六)

 視線が一気に朱美の方へと突き刺さる。明らかに目の色が変わっていた。『何色か』と問われれば、当然赤。血走っているとも言う。

 鼻息が嵐のように吹き荒れて、机上の資料がフワフワと舞う。

 それでも朱美は前を向き、顔色一つ変えずに立ち尽くすのみ。まるでさっき説明した『人形ドール』のようではないか。


「じゃぁ朱美さん。捲って差し上げて」「はい。ご主人さま」

 狂っている。とち狂っている。言う方も言う方だが、答える方も答える方。本来なら『正気を保っている奴』が一人は居るものだ。

 総務から派遣された『女性審判』は、江口部長の圧に負けて保健室でお休み中である。だから今は『男性審判』が同席していた。

 しかし奴も『審判』である前に、一人の『男』なのであった。


 考えている。必死に。もし『この命令がセクハラである』と決め付けるならば、先ずは『出席者全員での採決』が必要となる。

 又は『仕事を受けた側の申告』を得られて、初めて次のステップへと移行が可能。しかし今は、幸いなことにどちらも出来ない。

 やたら滅多らと審判が出しゃばってしまっては、この『審判制度』を煙たがる連中に、制度自体が変えられてしまう恐れも。

 採決を開始する『緊急ボタン』に掛けられた審判の指が、小刻みに震えていた。この震えの原因は『良心の呵責』なのか否か。

 そして決意する。『ひとまずここは良く診てから決めよう』と。


 機械的な返事をした後も、朱美は暫しそのままであった。更衣室に戻った後の『電撃』を気にしていたから、と言えばそれもある。

 それはそれとして、問題は『シングル』か『ダブル』のどちらか。

 スカートの『捲り方』一つを取って見ても『作法は様々』であるが、男を喜ばす方法は何か。目の前の男について情報は少ない。

 判っているのは『エロい』ことだけ。あとは徹より小さそう。

 しかしその前に『必要性』についても考え始めていた。

 自分はハッカーなのに、かつ『薄荷飴ミントキャンディーズの一員』なのに、AV事業部に呼ばれていないのだ。これは一体、『何』を意味しているか。考えなくても判る。

 残念ながら『信頼』が足りていないのだ。そう言い切れる。


 そもそも『システム開発をしたい』という希望は高田部長イーグルに伝えてある。しかし事務作業ばかりが続いていた。

 ゲームとは言え『エロエロ学園(仮称)』改め『エロエロ大学校』という『新しいシステム開発』が始まろうとしているときに、『自分が呼ばれない』という状況は、何を意味しているのか。

 もしかしたら『この場』が、『プロジェクト参加試験』なのではないかとさえ思う。いや待てよ。そうじゃない。

 この場こそが、プロジェクトへの参加を決定する『最終選抜』なのだ。だとしたら『更衣室のやり取り』も全て合点が行く。


「おぉおぉおぉっ!」「おぉおぉおぉっ!」「おぉおぉおぉっ!」

 朱美は覚悟を決めていた。選択したのはダブル。シングルは徹専用。スカートの中段辺りを両手で摘まみ上げると、ゆっくりと上へ。今のだらしない歓声は『膝頭』が見えた瞬間だ。

 朱美は鼻息を堪えていた。徹はその程度で喜んだりはしない。やはりダブルにして正解だ。後ろに立つ試験官ホークの顔は確認すべくもないが、振り向いた瞬間に『不合格』なのは間違いない。

 すると突然、一人の男が立ち上がった。やはり小さい。しかし声の方は無駄に大きくして、走って来たではないか。


「うぉおぉおぉっ、堪らんっ!」「俺もっ!」「じゃぁ俺もっ!」

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