海底パイプライン(百十三)
名前が『カタカナ』なのは外人の証だ。ビシっと決まった二人の立ち絵に『相応しい名前』なのかは置いといて。
「適当な名前だなぁ」「『シオン』はまだ可愛いけど、『サンカン』はどうなんでしょう」「無いよ」「もし、長女と次女だったら?」
ブー垂れている所に来た質問に、琴坂課長は直ぐに答える。
「そりゃぁ『イッセキ』と『ニチョウ』じゃねぇの?」「いやいや」
「ちょっと『ことわざ』から離れましょ?」「どっちも可愛くねぇ」
「本人泣きますよ?」「そうかなぁ」「そうすると五女と六女は?」
一人だけ面白がって質問をしているが、他の者は冷めている。
「『ゴゾウ』と『ロップ』に決まってるじゃん」「ダメダメダメェ」
「どうやったら『ゴゾウちゃん』で、ムラムラするんですかぁ」
「まだ『ロップ』の方が?」「もう既に『ことわざ』でも無いしぃ」
「ちなみに七女と八女は『シチテン』と『バットウ』ね」「いやもう良いです。名前は俺達で決めますから」「三つ子だったら?」
「『ヒ』と『フ』と『ミ』かな」「ハイハイハイハイハイ……」
どうも琴坂課長の『ネーミングセンス』は、壊滅的に悪いようだ。
「そもそも『エロエロ学園』ってのが頭悪そうですよぉ」「そう?」
その表情からして、やはり『命名』は琴坂課長らしい。
今の所『仮称』として紹介されているが、ほっといたらそのまま採用されかねない。『エロエロ学園(仮称)』という名前で。
「大体『学園』って言ったら『高校』みたいじゃないですかぁ」
「あっ、そう言われてみると、そうだねぇ」「今更ぁ?」
慌てて資料の表紙を見て渋い顔になった。それだけではない。右手を顎につけて、真剣に悩み始めたではないか。
ゲームの骨子を考えたのは高田部長だが、細かい設定については琴坂課長に一任されていた。ゲームの舞台を『学校風』にしたのには、ちゃんとした理由がある。
「やっぱ『パンパンするのは大人』に、したかったんだよねぇ」
おっさんがしみじみと語る。娘の琴美だって年齢はもう大人だ。
「十八歳以上ってことぉ?」「えっ、それだけの理由ぅ?」
誰でも彼でも、『年齢に関係なくパンパンさせて来た奴ら』にしてみれば、琴坂課長の『自主規制』は理解出来ないだろう。
「それだけって何だよぉ。ちゃんと節度のある『大人の物語』にしないと、世間的にも道徳的にも、イカンでしょうがぁ」
「こんな酷い設定をした人に、『道徳的』とか言われたくねぇ」
「じゃぁ『大学』ってことにすれば、良いんじゃないですか?」
資料を演台に置き、考えるように上を向いてしまった。しかし直ぐに前を向いた。腕を組んで問いに答える。
「うーん。そうすると『エロエロ大学』ってことぉ?」「安易かっ」
「いやでも、『一条高』って訳でもないしなぁ。ちょっと無理がぁ」
「何だ『一条校』って?」「学校教育法第一条で定められた学校のこと」「で?」「いや判れよ」「判らんから聞いてんだろ」「だから『学校』じゃなくて、『塾』だって言いたいんだろ?」「あぁ」
再び考え込んでいた琴坂課長が両手を腰に当てる。
「大学だと四年通わないといけないからなぁ」「別に良いんじゃないですか?」「いや『新鮮な女の子』に、毎年入れ替わらせたかったんだよねぇ。四年も攻略してたんじゃぁなぁ」「そんな理由ぅ?」




