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海底パイプライン(百十一)

「全く。そんなに好きなら、ちょっとは調べておけよ」「……」

 反論がない。何せ奴らは未経験のまま映像を造り続けていたからだ。第三課が出来る前は、第二課の『エロアニメ』の担当であった。

 と言っても『絵心』がある訳でもなく、脚本や撮影、進捗管理等を手掛けていた奴らなのだから、未経験でも何とかなる?


「吉原にでも行って、手取り足取り教えて貰って来いよっ!」

「えぇえぇ……」「それはちょっと……」「そんな所に行ったら、幾ら吸い取られるか判んないじゃないですかぁ」「そうなのぉ?」

 発案者が知らんのか。呑気で良いな。と、誰も口にはしない。

 別に『未経験者はエロ動画を創ってはいけない』という法律がある訳でも無し。だからもっと胸を張って然るべき。しかし『世間の評判が高いか』と言えば、そうでもないのが現実である。


「俺は『映像』だけで良いっす」「俺も」「俺も」「じゃぁ俺も」

 時代は『本物』から『空想』に遷りつつあるようだ。

「録画して何度も観るんだぁ」「俺にもダビングしてくれよぉ」

「俺も」「俺も」「じゃぁ俺も」「お前『人真似』ばっかだなぁ」

 プレゼンはもう終わりだろう。和やかなムードになっていた。


「あっ、先に言っとくけど『録画』は絶対に出来ないから」

 出た。どこまでも厳しい仕様。それを琴坂課長は飄々と言って退ける。それこそ『世間の評価』等、これっぽっちも気にしていない。

「マジすか?」「何で?」「映画も?」「いや映画は良いけど」

 半ば呆れ顔である。さっき説明したのにもう忘れているとは。


「だからさぁ『エロいシーン』は、専用ハードで閲覧だからぁ」

 一度終わり掛けたプレゼンを再開していた。スクリーンに表示されたのは『ドーム型』の装置だ。丁度『金持ちの浴室』位の。


「『映画の続き』はこの部屋に入って貰って、中に表示される『3D映像』と駆け引きをして貰うことになる。だから録画は不可だ」

 スクリーンを『タンッ』と叩くと『中の映像』に切り替わる。

 するとそこには、どう見ても『宇宙船の一室』が広がっているではないか。雰囲気のあるダブルベッドに、寝そべっても大丈夫そうな大きなソファーセットまで。宇宙なのに。まぁ良しとしよう。


「ここで最終的に『パンパン』しちゃうと、賞品は貰えない」

「えぇえぇえぇっ!」「それは酷い仕様っす!」「考えた奴は鬼だ」

「当たり前だろぉ。暗黒帝国での最終決戦に向かう途中なんだぞ?」

「……」「……」「……」「でもなぁ……」「そうだよぉ。ひでぇ」

「あのぉ、それって一人しか体験出来ない感じ? 観客は?」

 どの道『最終選抜』に残れないと思っている奴が恐る恐る聞く。


「映画の半券で観れるよ?」「半券が有ればタダで?」「うん」

「おぉっ!」「太っ腹ぁ」「俺、それで良いやぁ」「じゃぁ俺も」

「でも観れるのは『映画で良い感じになったキャラ』だけだから」

「はぁ?」「何それ!」「やっぱタダじゃなかったぁ……」

 スクリーンに『プレイ中の様子』が図解されていた。ドーム内には『イチャイチャ役』が居て、外では『3Dゴーグル』を装着した観客達が椅子に座り『人のプレイ』を満喫している。


「そういうことぉ?」「じゃぁ映画で誰が良い感じになるかは?」

「そんなの一番最初に『マルチエンディング』って言ったべよぉ」

「あぁあぁっ!」「言ってタァ」「俺達が作るんだってぇ……」

「じゃぁ、お目当ての娘が『良い感じ』になるまで観ないとぉ」

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