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海底パイプライン(百八)

「だとしても、精々『体の良いフィギア』ですよねぇ?」

 鼻で笑いながら言われて、琴坂課長が振り返った。

「フィギアって、手足動いたりするんだ」「しますよぉ」「へぇ」

 感心しているが、納得はしていない様子。どうしても『フィギア』とは認めてくれない。お互いに口をへの字にして喧嘩別れだ。

 琴坂課長は手元に取り出した『資料』の方を見て、説明を続ける。


「でねぇ、体重は約五十キロ」「はぁ?」「重くねぇ?」「何で?」

「うん。まだプロトだし変わるかもだけど」「もしかして実物大?」

 資料に目を落としていた琴坂課長が顔を上げたが、一同はその顔を一目見て『はぁ? 何言ってんだぁ? そんな訳無いだろう』に思えた。口をパカーンと開けて、顎を前に出していたからだ。

 きっと『体重五十キロ』なんて、言い間違えに決まっている。


「はぁ? 何言ってんだぁ? そんなの当たり前だろう」

「ですよねぇ」「だと思いましたよぉ」「パンパンすんだからぁ」

 騒ぎ始めた一同を他所に、琴坂課長は時計を見て説明を続ける。

「きっと五百グラムの間違い」「背丈もコン位だべ?」「ちっさっ」

「お前、そんなんじゃ『子宮』まで届かねぇだろぉ。まぁ良いかっ」

 勝手に盛り上がっている所に割り込んで、『サイズ』について指摘しているが、誰も聞いちゃいないのがちょっと切ない。


「髪は本物を使用してぇ、あぁ『水色』とか実際に有り得ないのは止む無く染めることになるけど、そこは一点物だから心配無い」

「顔はそっくりなんですかぁ?」「あぁ。寧ろ『型』から起こしてCG作るから、一緒にならない方がおかしい」「おかしいのは設定」「あははっ。そりゃ言えてるぅ」「んなもん、入手不可でしょうが」

 流石は『超主任』である。幾ら騒がしくなっても『仕様に関すること』については、しっかりと耳に届いているようだ。的確な答え。


「背面の腰の所に専用スタンドを挿せる所があってぇ。こう……」

 残念ながら『映像』は無いようだ。自分の体を使って説明か。

「何だ自立しないのか」「撮影するときに、結構邪魔になるよなぁ」

「片足を上げて肩に乗せた感じで、こうプレイすることも可能です」

 何やら書類を持った右手を高く掲げ、左手は腰にやり、挙句に足を開いて腰をカクカクとし始めたではないか。

 勝手に話し込んでいた一同も、琴坂課長を指さして笑い始める。


「何だぁ? 踊るフィギアなんですかぁ?」「うわぁ」「きもっ」

「変な踊りぃ。要らねぇ」「まぁ、『踊る』っちゃぁ踊るけどなぁ」

 仕様を思い出しながら答えた。騎乗位なら『踊る』と言えるか。

「そんなカクカクしてぇ?」「馬鹿、カクカクするのは男の方だよ」

 眉を顰めて踊りを止めてしまった。しかし一同笑いが止まらない。

「何それっ!」「男が踊らないとダメなんですかぁ?」「変な仕様」

 コイツ等『ホテルの窓際』で、プレイしたことは無いのだろうか。


「ちょっ、当たり前だろぉ? お前ら『やったこと』無いのかぁ?」

「ないない」「有る訳ないでしょうがぁ」「そんな踊りしないっす」

 あっさり否定されてしまい、逆に驚く琴坂課長。『あれは変態プレイだったのだろうか』と心配になってしまった。

「そうかぁ」「そうっすよぉ」「後で可南子に聞いてみっかぁ……」

「当たり前っ」「誰がするのぉ」「まぁ、人それぞれだしなぁ……」

「もしかして『主任の趣味』なんですかぁ?」「いや違うよぉっ!」

 考え込んでいた様子から一転。両腕を大きく振っている。

「あははっ!」「必死に否定している所が怪しいっ!」「ウケル!」

 妙に納得する琴坂課長を、より大きな笑い声が包み込んでいた。

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