海底パイプライン(百六)
「えー、ダメなんですかぁ?」「ちゃんと親しくなったのにぃ?」
「当たり前だっ! 自分だけ『美味しい思い』をしておいて、それで他人が稼いだポイントで、何で『行ける』と思うんだぁ?」
半分笑いながら問いただされても困る。思わず言い返した。
「でも、好みの女の子でプレイして『ポイントを稼いだ』から、最終選抜に残れているんですよねぇ? 酷くないですかぁ?」
「何を言ってるんだ? 『パンパンした時点』で、稼いだポイントなんてゼロだ。ゼロッ!」「厳しぃ」「酷いなぁ」「酷くないっ!」
するとスクリーンに『システム構成』が現れたではないか。
「十台サーバーがあって、そこに女の子は一人づつだ」「はいぃ」
次の瞬間、見覚えのある縦ロールのエリザベスが表示された。
「だから全部で、『十人のエリザベス』が居ることになる」
「ミニサイズも可愛いなぁ」「あぁいうキャラクターグッズも出して欲しいね」「だったら俺、それ買うわ」「ホラお前ら聞けっ!」
今度は沢山の『男共』が表示されて、エリザベスの頭上にポイントがドンドン溜まりだした。琴坂課長がスクリーンを叩く。
「もし『Aサーバーのエリザベス』がパンパンされたら、このエリザベスが稼いだポイントは全部パーだ」「ええっ?」「そゆこと?」
「そぉゆぅことっ! だって『この世界のエリザベス』は、最終選抜に残れないだろぉ? じゃぁ、選ばれないじゃないかぁ」「……」
「だから『先生が居る』と?」「正解。皆で、必死に守れぇ?」
何だか『俺は知らんけどな』と、言ってそうな顔で言われても。
幾ら日本人が『一発逆転が大好き』だからって、『何だかなぁ』と思わざるを得ない。何せ自分が大切にしてきたキャラが、誰かにパンパンされた瞬間、全ての努力が無駄になってしまうのだから。
「もし女の子で、『私も映画に出たい』って人が居たら、どうするんですかぁ?」「あっそれ、俺も思った」「出たいかなぁ」
一瞬騒がしく成り掛けた会議室であるが、それは直ぐに収まる。どうせ『課金アイテムが必須』に決まっているからだ。世の中金か。
「リクエストに応じて設定しても良いけど、『最終選抜に残る条件』は、『他のキャラ』と変わんないからね?」「と、言いますと?」
今説明したばかりなのに、もう条件を忘れてしまったのか。琴坂課長はもう一度スクリーンを指し示した。
「いや、一人で毎日『十サーバーにログイン』してだね、あぁ『アカウント作成はサーバー別』だからね? そんでもって、誰も『自キャラを操作してくれる男』が居ないから、ぜぇんぶ自力でポイントを稼がないとダメよぉ? イケると思う?」「それは厳しぃなぁ」
その説明を聞いてしまったら、それだけで無理と思える。
この世界の日本で『本人認証』は、耳裏に埋め込まれた生体チップで行うため、他人に成りすますことなど不可能なのだ。
故に『複数アカウントで同時にログインすること』など、幾らパソコンを複数用意しても、絶対に出来ないのだ。
「あと、忘れちゃ困るけど『純潔』って条件も、ちゃんと有効よ?」
「うわうわぁ」「検査するんすかっ?」「診断書が必要だったり?」
「そんなことはしないよぉ」「じゃぁ、どうするんですかっ?」
今まで『そんな条件』を課したゲームは、この世に存在しない。
「いや別に。純潔じゃないと、闇の帝王を倒せないだけぇ」「あぁ」
「そうだ思い出した。『映画の続き』でパンパンするんだった……」




