海底パイプライン(百)
「だってゲームだから、一応女の子がプレイすることもあるでしょ」
画面が切り替わって『キャラメイク』のシーンが現れる。
「えっ?」「どういうこと?」「それって?」「何、どうしたぁ?」
琴坂課長は不思議そうな顔だが、騒ぎ始めたのは無理もない。
通常なら顔の輪郭や目、鼻、口等の『パーツ』を選択し、微調整して顔を作成するのだが、デフォルトの選択肢が『写真から生成』となっていたからだ。サンプルとして『メイドの朱美さん』が。
「こうなっていれば、一番簡単でしょうがぁ」「もしかして男も?」
突然の問いに、琴坂課長は右手を縦に振って笑っている。
「そりゃそうだ。別に自分で作っても良いですけど、何? 問題?」
顎をヒョイと前に出して聞いているが、一同の反応はイマイチだ。
返事が無いので、琴坂課長は首を捻りながら説明をするしかない。
「ほらぁ、男と女がここで出会って、気に入ったらリアルで会えば」
「そういう理由?」「他に何が?」「でも、『エロ目的』の人は?」
興味が沸いた部分だけは妙に質問が多い。まだゲームリリースもしていないのに、『プレイすること』を前提としているようだ。
「別に変えても良いけど、元に戻すの『課金アイテム』必須だよ?」
「良いよなぁ?」「うん要らね」「でも『賞品』と関係あるしぃ?」
意味深に言われて空気が変わった。全員が前のめりになっている。
「そうなんだ」「そうそう」「因みに戻すのって幾ら?」「ニ百万」
値段を聞いた途端、全員が後ろにひっくり返ったではないか。
「たけぇ!」「戻す奴いんのかよっ!」「ぼったくりっ!」「俺だったら、ぜってぇ戻さねぇっ!」「何だそうなのかぁ。まぁ良いや」
又も意味深に着地。どうやら『ニ百万の設定』は変更無しか。
「あのぉ『先生』って、選べるんですかぁ?」「あぁ、選べるよぉ」
再び『登場人物』の相関図が表示された。生徒とメイドの上に表示されたのは、『校長』『教頭』『担任男』『担任女』である。
それと別格で『養護教諭』『食堂のおばちゃん』『食堂のおじちゃん』『用務員のおじいちゃん』が選択可能なようだ。
「先ず『校長』と『教頭』は『入札制度』でキャラ選択出来まーす」
「課金キャラってことぉ?」「その通りです」「意味あんのかよっ」
どうやら『顔』は選べないらしく、如何にもな感じの男女のキャラの中から選ぶだけのようだ。しかも『男子生徒』又は『メイド』の欄で、キャラメイクすることになっている。
「意味はあります」「どんな?」「落ち着け。今から説明するって」
スクリーンを『タンッ』と叩くと、校長や教頭から生徒に向かって『強権発動』の矢印が表示されたではないか。嫌な予感がする。
「男の校長は一定条件を満たすと、女学生に『手を出すこと』が出来ます。女の校長は逆に、男子に『手を出すこと』ができまーす」
「犯罪じゃないですかっ!」「未成年なんだろっ?」「いやいや」
「違うんですか?」「そりゃぁ無理矢理やったら、年が幾つだろうが犯罪者ですけど、エロエロ学園(仮称)の入学時点で十八歳なんで、立派な成人でーす。だから、問題ありませーん」「問題だよっ」
「そうだよ。『犯罪を助長する』ようなことしちゃダメでしょぉ?」
「何言ってんの。ゲームだったら見境なく人殺しだってするのに?」
言われて固まる一同を前に、琴坂課長はニコニコ笑っている。
「まぁ兎に角、ストーリーモードの終盤で、『あいつを蹴落としたい』『狙われているあの娘を助けたい』等、『一発大逆転』を狙えるのが、この『校長』と『教頭』なのですぅ」「うわうわぁ……」
「因みに『手を出した』ら、即辞任になります」「そこはリアルッ」




