海底パイプライン(九十八)
「専用ハード?」「そう。この『ドーム型立体図形照射装置』でだ」
スクリーンに映し出されたのは、琴坂課長が言ったのと『同じ物』なのだろう。確かに天井が丸い『ドーム型』になっていて、周囲にカメラが数十台も設置されているそうな。それで?
琴坂課長が取り出したのは、白い『ゴーグル』である。それを指さしながら会議室を見回して一言。
「まぁ『映像』を見て貰った方が早いだろう。誰か一人前へ」
「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」
「俺が見る」「俺だっ!」「なら俺に」「いや俺だ」「では私が」
「宏実ちゃんはダメ」「それは『俺だけのもの』って意味で……」
「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」「はいっ!」
「じゃぁ、君に決めたっ!」「うおぉおぉおぉおっ」「ずりぃ!」
会議室は、先の五行以上に『煩いこと』となっていたのは事実だ。
指名された男が前に出て来るとゴーグルを装着した。その瞬間だ。
「おぉおぉっ、すっげぇぇっ!」「彼が見ている映像がコレだ」
スクリーンに映し出されたのは、完全に『R指定』の映像だ。
裸体となったリリィが揉みしだかれながら、恍惚の表情で男を見つめている。そこへもう一本の『男の手』が伸びて来た。
「俺の手じゃないぞ?」「本番では『専用手袋』で感触有りになる」
「マジかっ!」「スゲェ」「映像だけでは無いってこと、かぁ……」
リリィの後頭部を包み込むと、力が入ったのだろう。
一瞬下を向いて躊躇った表情を魅せたリリィだが、逆に嬉しそうな顔になった瞬間、画面一杯になって行く。これ4K超えてる?
「観戦者は、周りに配置された十数台のカメラから、『好きなアングル』を選んで、リアルタイム鑑賞することが可能だ」「えっ?」
「観戦者?」「誰でも『やれる』んじゃ、なくて?」「どゆこと?」
説明に付いて来れていないのを察知した琴坂課長は、次の映像を出すのを止めた。溜息をついて、違う画面に切り替えている。多分『予備』として作って置いたであろう『説明資料』に辿り着く。
「男性が『ゲームに参加』していて、この場合女の子は『リリィ』を選択し、男の子は『本人』と二つのキャラを動かしていたとする」
どうやら一アカウントで、男女二つのキャラが保有出来るらしい。
「それでリリィが最終選抜に選ばれて、本人がリリィから『ご指名』を受けた場合に、『ドームへ参戦出来る』と言う訳だ。判るかぁ?」
「マジかぁっ!」「じゃぁ、自分で自分を落とせば良いのかぁ?」
一瞬誰もがそう思ったらしい。しかし琴坂課長は鼻で笑っている。
「んなこと出来る訳無いだろうがぁ。本人が『リリィを操作している』とき、『男キャラ』は登場して来ないからなぁ?」「うそっ?」
「嘘じゃないよぉ。だって『女キャラのストーリーモード』は『授業内容』で勝負して貰う訳だからさぁ。だから男は出て来ないのっ」
スクリーンを『タンッ』と叩き念を押す。しかし直ぐに発言が。
「えっ? 仲良くなった男から『アイテム』をって、ま、まさか?」
「はい。男が作った奴は、『課金アイテム』として販売致します!」
「きったねぇ」「やっぱそうなるのかぁ」「いや、当然でしょぉ?」
もう一度スクリーンを『タンッ』とやって、小さい字を示す。
「男が『本人キャラ』を操作しているとき、リリィは『サーバーに一人』で、操作しているのは『AI』だからなぁ?」「やっぱりぃ」
「当たり前だろぉ。そうじゃないと『やりたい放題』になっちまう」




