海底パイプライン(九十五)
「エロい事し放題って奴ですかぁ?」「んんーちょっと違うかなぁ」
画面が切り替わって、男子生徒のカリキュラムが映し出される。
しかしそれは、『保健体育』とは言い難い内容ではないか。
「野郎の仕事は『機械の整備』や『武器の制作』になりまーす」
「戦闘は無いんですか?」「ない」「えぇー?」「格闘要素は?」
「それはある」「じゃぁ戦闘有るんじゃないですかぁ」「無いのぉ」
説明が矛盾しているように思える。どうやら煩く質問してくる奴らには、実際にプレイして貰った方が良いのかもしれない。
「最終選抜に残る条件に、『純潔』っていうのが有りましてね?」
会議室に居る、全ての男達の目が光った。さっきまで煩く質問していた奴らは鳴りを潜め、プレゼン資料の裏にメモを取る準備だ。
「男子は彼女達を『どう攻略するか』が、メインのストーリーと」
切り替わったスクリーンを『タンッ』と打つと一斉に注目が集まる。そこには『女生徒の攻略パターン』が図になっていた。
「良い武器を作って提供し『好感度を上げる』とか、マシンの性能をアップして『好感度を上げる』とか、兎に角『サポート役』として彼女達を支えるのが『通常ルート』となる訳です」
力強い説明は、力強いスクリーンを擦る音と共に。男達は難しい顔をして頷いている。すると一人の男が、静かに手を上げた。
「何だね?」「通常じゃないルートと言うのは?」「それだっ!」
琴坂課長がポインタで指す。が、直ぐに振り返って説明を続ける。
「まぁ、例えば『体育館裏』に呼び出してぇ」「有りなんですか?」
指し示したのは『戦闘訓練棟』であるが、それはどうでも良い。
問題は琴坂課長が振り返って、『ニヤッ』と笑たことだ。
「て、言うのもぉ? アリっちゃ有り」「マジかっ」「犯罪の臭い」
誰もが『そういう絵面』を思い浮かべていた。普段から『エロ動画を作っている連中』である。結構好き勝手にやっているのだろう。
しかし『体育館裏の映像』が流れ始めてからは、全員が『思ったのと違う』と感じていた。スクリーンを見ていない朱美を除いて。
「彼女達が普段着ているのは『パワースーツ』でねぇ。力では到底及ばないって設定になってるんで。まぁ、御覧の通り返り討ちね」
手籠めにしようと集まった男達は、一人の女の子にコテンパンにされてしまっている。そして次の瞬間『退学』の赤文字が。
どうやら『男性キャラ』としては『ゲームオーバー』のようだ。
「なので、ふつぅぅに正面からお付き合いを求めて行って下さい」
「やっぱりそうなりますか」「だりぃゲームに、なりそうだなぁ」
突然文句タラタラである。どうやら『出会い系ゲーム』をじれったく思う人が多いようだ。説明した琴坂課長もそれには同意か。
「まぁ、そうだと思いますよ? 実際自分でプレイしようとは……」
苦笑いで首を横に振っているのを見てしまっては、思わず全員で突っ込まざるを得ない。一気に会議室が騒めき出す。
「何だ、開発者がそう思って良いのかよぉ」「そうだ、そうだぁ!」
「ゲームは『楽しむため』にあるんだぁ!」「気楽にヤラセろぉ!」
しかし琴坂課長は『しょうがないんだ』という顔で、両手を縦に振っている。設定を『楽な方』に変更する気は無いようだ。
「最終的に『好きな娘』を落とすとなぁ? 豪華な賞品が出るんだ」




