表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1275/1532

海底パイプライン(八十八)

「そんなに汗なんて掻いて無いわよっ! 失礼ねぇ……」

 口では悪態を突きつつも用意されたタオルで汗を拭う朱美。

 育ちが良いから『根は素直』と言うべきか。荒れた口調は同僚のせい。それとも本当の地か。いや彼女も『ハッカー資格』なんてものを取得しなければ、NJSに派遣されることも無かっただろう。

 ただその場合、代わり派遣されたのは『天国』であろうが。


「はい。これで良いんでしょっ!」『パフッ』

 説明している間に、あられもない姿で『あらぬところの汗・その他』を拭き終えた朱美は、タオルを『こちらです』と表示されたロッカーに投げ入れた。それから顔を顰め、きわどい下着を身に纏う。

 一緒に用意されていた『シェーバー』は、使うまでもなし。

「これ、ちょっときつくないぃ? あぁっと、もぉっ」

 きっと『琴美用』に採寸された衣装なのであろう。琴美には申し訳ないが、胸回りがちょっときつくて、腹回りは緩い。典型的な嫌味で申し訳ないが、それが現実だと本人に伝えておくとして。

 ガーターベルトとか『お手伝いさん』だったら、『絶対に付けていないだろうが』と、突っ込みも入れたくなる。


『ガーターベルトを装着しましたら、次の扉を開けて下さい』

 こんな感じで着替えが強要されているのだ。こうなると、文句があろうが何しようが、順次『メイド姿』へとならざるを得ない。

「はいはい。随分と注文の多い更衣室ですねぇ? 誰の趣味ぃ?」

 誰でしょうねぇ。多分AV事業部の誰かとは思うが、ロッカーからの返事は無い。朱美はブツブツ言いながらも装着するしかない。


「次は?」『カチューシャを付けましたら、鏡の前に立って下さい』

 だからこんなに可愛い髪飾りは、『お手伝いさん』だったらって、もう良いわ。着けりゃ良いんでしょ? 着けりゃ。ハイ着けた。

 しかし朱美自身も、鏡の前に立てば『満更ではない』と思う。

 一応は全体的に『おかしな点』は無いかチェックを始める。問題ない。『これが制服』と言われれば『ですよね』しか言わせない。

 体を左右に振って、後ろのリボンやスカートの広がり具合も見る。自分で言うのもなんだが、完璧に着こなしたと言えるだろう。

 徹が見たら、絶対ベットに押し倒して来るに違いない。あぁ、だとしたら昨晩は、あれで『随分我慢していた』のだろう。男って。


「はいはい。出来上がりましたよぉぉだ。開けて下さーい!」

 鏡の前で、ふざけて見せる余裕まであった。『次の仕事』のことは、一旦忘れている。そう、これは『勤務中』なのだ。


『その言葉使いは何ですかっ!』「ハイッ! すいませんっ!」

 何だか『自分の声』に怒られてドキッとするが、鏡に表示されたのは『自分』ではない。何だか『メイド長』みたいなおばさんだ。

 とんがり眼鏡に片目をあて、連れて来られた『新人メイド』を上から下までチェックしている仕草が怖い。朱美はジッとしていた。


『あなたに許された返事は、何を言われても『はいご主人さま』これ一つです。他の返事は許されません。判りましたか?』「はぁ?」

『今言いましたよっ! お返事は一つだと!』「はいご主人さま!」

『よろしい。では笑顔でご挨拶を。はい』「おはようございます?」

『違うでしょっ! もっと笑顔でっ!』「えぇはい。ご主人さま!」

『『えぇ』は要らないっ!』「はいっ! ご主人さまっ!」『そう』

『ご主人さまから頂いたお前の名前は『朱美』だ』「ええっ、あっ」

『今日からこの名前をって、不満があるのかいっ!』「いいえっ!」

『悪い娘には電気ショックだよっ!』「はいご主人さまっ、ヒィッ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ