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海底パイプライン(八十五)

「いやそんなに待てませんよっ! 今日中にお願いしますっ!」

 朱美は心の奥底から叫んだ。こいつらと寝食を共にするだなんて、正直身の毛がよだつ。絶対に御免である。

 しかしペンギンは、意外にも嬉しそうにしているではないか。


「今日中なら良いんですねっ!」「良かったじゃないですかぁ」

 ペンギンの確認にイーグルが乗っかっている。朱美は顔を顰めた。

 一歩前に出てペンギンの肩をポンポンと叩く。

「ちょっともしもし?」「はいはい?」「今日中って、言うのは!」

「深夜零時ですよね?」「違いますっ!」「えっ、違うんですか?」

 驚いたのはイーグルの方だ。朱美を押し退けてペンギンの両肩を掴むと、ゆっさゆっさと揺さぶり始めた。


「大変ですよ。ここでは時間の概念がねじ曲がってしまっています」

「何だって? もしかして地球が逆回転を始めたのかもしれないな」

 深刻な顔で話し合いを始めたペンギンとイーグルの二人。しかしペンギンの手は休みなく動いている。そこは『流石』と褒めたい所であるが、今の朱美にしてみればそれ所ではない。

 コイツ等のために、昼食と夕食まで手配しないといけないとは。

 取り敢えず昼飯は寿司にするとして、夜は肉だろうか。はて。


「ちなみに『電話回線』も引っこ抜いて貰いますからね?」「えっ」

「『え』じゃないですよ。こっちは判ってるんですから」「何を?」

「モデムをチカチカ言わせてぇ」「いやそれは速度が遅いですから」

 笑って否定するイーグル。しかし朱美は知っている。

「無線LANを起動させようとしてるでしょぉ?」「……」「……」

 図星だったようだ。しかし朱美も負けてはいない。

「この部屋にも『電磁シールド』張りますから、電波は無効です!」

「そんなことしたら、ネットに繋がらなくなるじゃないですかっ!」

「ほら、『電波測定』しておいた意味が無くなってしまいますよ?」

「何とかしてネットに繋ごうとする気、マンマンじゃないですか!」

「そりゃねぇ?」「色々情報取らなきゃいけないし」「当然ですよ」

「それは『プレイ動画』ってやつも含みますかねぇ? ゲヘゲヘッ」

 一番下衆な顔をしているのは琴美だ。まるで『金の臭いがするぜぇ。そこら中からプンプンとなぁ』とでも言うであろう顔に。

「だからぁネットには繋ぎませんっ! コンセントも抜きますっ!」

「えええぇっ!」「いやいや、流石に『電気』は使いますよねぇ?」

「いいえ。使うにしても、こちらの『無停電電源装置』経由ですぅ」

「これは『他社製品』じゃないですかぁ。おい、これ、行けんの?」

「いや無理ですって。使われているチップが家のとは違うんで……」

「電源から侵入しようとしたって無駄ですからね? 知ってるんで」

 堂々と言い放つ朱美。どうやら『電灯線LAN』の侵入口まで考慮して、既に対策を練っているようだ。これには電源チップに細工を施した張本人であるペンギンも慌てざるを得ない。耳打ちだ。


「おい、何で知ってんだよ」「いや何ででしょうね?」「いやじゃねぇよ。逆に何でお前が知らないんだ。首絞めっぞ?」「朱美さん、プラザで製品説明してましたけど?」「馬鹿、何でそんな部署に飛ばしたんだ。最高機密じゃねぇか」「いや『開発に関係ない部署に飛ばせ』って言ったの、ペンギンじゃないですかぁ」「いやいや開発にモロ関係してんだろっ!」「そうですかねぇ?」「判らん? 大体『失敗作』ってのはなぁ、その会社のノウハウってやつの塊なんだよ。それを迂闊に部外者に晒してんじゃねぇ。何を考えてんだぁ お前はぁ」「ちゃんと上長印、押して貰いましたけど?」「はぁ? いつ押したぁ。押す訳ねぇっ。地球が何回回ったときだ」

 どうも奴らの『ヒソヒソ声』はとても大きい。朱美は呆れている。

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