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海底パイプライン(七十九)

「いや、花火の種類は良いです」「一応、こんだけ有りましてねぇ」

 話を聞いちゃいない。都合が悪いときは『聞こえないフリ』か。

 ペンギンは『花火の一覧』を画面表示して、それを朱美に見せた。

『何だこのエロジジィ。耳も遠いし、仕方ねぇなぁ』

 流石に口には出さないが、そう思っているのが丸判りな朱美の顔。

 一覧を見た瞬間『ほぉらやっぱり』の表情に変わった。


「あれ? さっきの『スターマイン』は無いんですか?」「あぁ」

 ヒョイと画面を指さす。朱美に向けていた画面を、慌てて自分に向け直したのを見て、朱美が逆に覗き込む。

「あれ?」「ほら」「あれあれ?」「次ページも無いみたいですね」

 勝利を確信して微笑む。やはりペンギンはもうろくしたのだ。

 すると違うボタンをタッチして、パッと画面が切り替わった。

「あのぉ『スターマイン』って花火は無くてですねぇ」「はぁ?」

「いくつかの花火を組み合わせて『連続発射』することを『スターマイン』って言うちょる訳ですわぁ。こちら標準の組み合わせでしてぇ、お値段で色々ございますぅ。どうですかぁ?」

 見せられた画面は『スターマイン一覧』である。朱美は驚く。


「十発五十万、五十発百万!」「多い程お得になっておりますぅ」

 ニコニコ笑いながら百発二百万の奴を勧められても困ってしまう。

「いやこれだったら、もしかして『本物の花火』が買えるのでは?」

「火薬の配合から燃焼タイミングまでCGで完全再現してますので」

「えっ、偽物なんだ?」「そんな『偽物』だなんて心外ですぅ」

 朱美の一言に怒ってしまったのだろうか。一覧をパッと消してしまった。しかし切り替わった画面を見せられて、朱美は眉を顰める。


「このように火薬の種類と配置を決めて、CG上でお気に召しましたらぁ、実物を発注して、打ち上げることも出来ます」「ええっ?」

「例えば一番お安い尺玉で、一発五万円から」「意外とお安いぃ?」

「はい。それを最低十発から発注して頂けます」「やっぱたっかっ」

「だってお客さまぁ。一発じゃ寂しいでしょぉ」「そうですけどぉ」

「今ならキャンペーン価格でご提供出来ますし、今後も同じ値段d」

「いや良いです。それに発注するなら、『お安い方』が良いのでぇ」

 朱美が画面をトントンしながら言うと、ペンギンは首を傾げる。

「えっ? お客様『お安いの』と言いますと? あれぇ値段の違い」

 切り替えていた画面を確認しながらパッ、パッと戻し始める。

「いやさっき花火と一緒に値段が出てましたよね?」「あぁあれぇ」

「花火の下に『三万~五万』って」「はいはいはいあれはですねぇ」

 再び画面を操作すると『花火の打ち上げメニュー』に変った。


「あの値段は『打ち上げ費用』でしてぇ、安いのは『新人』ですぅ」

「何か変わるんですか?」「勿論、変わります。全然違いますよぉ」

 画面をタップすると、数値だらけの『花火打ち上げ設定』が開く。


「ちゃんと風向、風量、風速、気温も加味して、人工知能で計算された結果を投影していましてねぇ? これを見誤ると花火の形が崩れてしまうように、なっておりましてぇ」「なぁんでわざわざぁ?」

「いや『よりリアル』になるようにってことで。こちらのオプションで『風見鶏』を設置すれば、実際の天気に合わせて変更も可能でしてぇ、百葉箱と風見鶏の三本セットで今なら大変お得ですよぉ?」

「風見鶏三本っておかしいでしょ。いや百葉箱で五十万とかぁ……」

「ほらっ、ちゃんと気温、風力を計算しますとねぇ? 打ち上げを完全再現出来まして。燃えカスが風に揺られて、観客席まで落ちて来る所まで、きっちり再現するんです」「それは凄いですけど……」

「これは強風。ほら、たこ焼きの鰹節が揺れているの、判ります?」

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