海底パイプライン(七十六)
「いえ、やりません!」「だそうですけど、監督、どうします?」
流石にお客様を引っ張り出すのは時期尚早と見たようだ。
テストへの『協力代金』を請求されるかもしれないし。
「次で勝負掛けるから。私が必ずイッて魅せる。よぉく見ときぃ!」
気合は十分である。上半身を起こして『パァン!』とパパの横ケツを叩いた。パパはいきなり娘に引っ叩かれて驚くばかりだ。
「パパ、私を生むまでに、何回お母さん抱いたのぉ?」
いきなりの質問にパパはたじろぐ。必死に指折り数え始めた。
「何数えてんの?」「いや一年に二百回としてぇ」「一本百かっ!」
「六百回?」「生で?」「当然」「随分頑張ってんじゃねぇかぁ」
相思相愛だと授かり難いと言うのは、迷信でもないらしい。
しかしパパは、まだ数えているではないか。
「一年目は一晩で三回戦が基本だったけど」「もう良いわっ!」
質問した癖に思わず打ち切っていた。そこまでパカスカやっていたのだったら、もう『ベテランの域』だ。文句の一つも言いたい。
「じゃぁもっと『しっかり』やって貰わないとっ!」「えー」
「えーじゃないでしょぉ。『琴美可愛いよ』位、言えないのぉ?」
「琴美可愛いよぉ」「まだ早いっ! 何だその言い方ぁ?」
「すいません」「頼むよぉ? 会社の信・用・が掛かってんのっ!」
ビシっと目を指さして言われてしまった。『フン』と鼻息と共に横になる琴美監督。色っぽい言葉もなく、ただ黙って『来い』と手招き。パパはドキドキしながら一歩前に出る。
「おらぁ、もっと密着しないとパンパンにならねぇだろうがっ!」
「はい……」「私のときは『手応えあり』って思ったんだろぉ?」
今更『回次』なんて判らない。しかし判ることが一つある。
「どちらかと言えば、手と言うか足?」『パァンッ!』「いてっ」
横ケツを引っ叩かれていた。それは判っていても口にしてはイケないことだったらしい。後で反省文に纏めないといけないだろう。
ペンギンもイーグルも『早くしろよぉ』とイライラし始めている。
「琴美ぃ。可愛いよぉ」「んんんっ! イックゥゥッ! あぁぁっ」
絶叫がこだまする。イーグルの反応は? 何も答えがない。
一同が固唾を飲んで注目していたそのときだ。
『ヒュルルルルルルゥ。アッハーンッ。パラパラパラァ』
大音響と共に花火が打ち上げられていた。イーグルが嬉しそうだ。
『ヒュルルルルルルゥ。ウッフーンッ。パラパラパラァ』
口をパクパクさせて『何か』を言ってるのだが、花火が炸裂する音が余りにも煩くて、何も聞こえないではないか。
「おじいちゃん! 『ボリューム』おかしいからっ!」「はぁぁ?」
『ヒュルルルルルルゥ。イックゥゥンッ。パラパラパラァ』
「ボリュームッ! デカい! 金剛じゃねぇっ! ボリュームッ!」
一瞬『何だ』な表情になってから、やっと花火が打ち切られた。
「監督ぅ。レベルマックスの『TRUE』です。初めて見ましたぁ」
イーグルが興奮するのは、やっぱりそっちか。しかし道理で花火が止まらない訳だ。きっと賢者タイムの間、ずっと鳴り響いているのだろう。しかし音量をペンギンに任せたのは失敗。要調整だ。
「まぁ私も今のは最・高・に気持ち良かったからね。当然の結果よ」




