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海底パイプライン(七十)

「こちらです」「ハイハイハイハイハイ」「はいはいはいはいはい」

 朱美が案内すると職人達が動き出した。あちらこちらを見ながら、口から出て来るのは何故か『はい』の言葉のみ。

 例えばイーグルが『丸い天井』を指さして「はいはいはいはいはい」。次にパパが床面に広がる液晶を指さして「はいはいはいはいはい」。岸辺から突き出した『岩風のクッション』をペンギンが指さして「はぁいはいはいはいはいはい」である。


「監督こちらでーす」「はーい。ちょっとすいません」「はい」

 イーグルが朱美と談笑している琴美を、手招きで呼び寄せた。

 お客様との大事なトークを打ち切って、琴美が現場にやって来た。

 岩風のクッションは三つに分かれていて、一つづつは『椅子のよう』であるが、背もたれはない。


「沖から一番、二番、三番?」「はい監督。その通りです」

 全部使えば、何とか『ベッド』として機能するカモしれないが、横幅は寝返りも出来ぬ程狭い。

 かと言って『支え』になるような物も、全く無いと来たもんだ。

 琴美は何度も上と下を見比べて、『ドーム天井の中心点』がどの位置なのかを確認し始めた。それは二番の、三番寄り角か。

 確認するために顔をそこに置き、真上を見上げる。


「ココだな。三番が枕かなぁ?」「いえ監督、一番の方に頭です」

 パパに言われて、琴美は怪訝な表情で起き上がった。

 仕事のパパは『普段とは違う』とでも、言いたいのか? また『嘘』ばっかり言って、合ってんでしょうね? の目だ。

 早速寝っ転がって見るが、案の定頭は一番の椅子を飛び越して、『空中』になってしまったではないか。足が浮いてしまう。


「パパ。そっち乗って」「えっ俺?」「ほら。パパしっかりぃ」

 実の娘とイーグルに言われて戸惑うパパである。

「お父さん、それは……」「パパッ!」「はいっ!」

「今日は『パパ活』って言ったでしょ?」「いや『パパ活』ってぇ」

 渋い顔をして戸惑う『パパ』である。『何か違う』と思うが如何ともし難い。誰も『パパ活の意味』を分かっていないのではと思う。


「そうだよパパぁ。しっかりしろぉ?」「じゃぁ、俺が乗るかぁ」

 グズグズしていてじれったくなったからか、ペンギンが足を伸ばし、『よいしょ』と琴美の足元へ迫る。

 すると血相を変えたパパが、肩をムンズと掴んで引っ張った。

「パパの仕事ですっ!」「おわっ!」「おぉ、パパの本気だっ!」

 渋い顔のペンギンに、琴美が優しい声でなだめている。

「ちょっとぉ。おじいちゃんは『別の仕事』があるでしょぉ?」

 足元にパパが乗ったことで、琴美は苦笑いで起き上がった。


「映像出る?」「はい。只今」『ピローン』「おっイイネイイネェ」

 既にイーグルが手元にある小型タブレット、いや見た目はそうだが、ノートPCの画面をクルリと回して『板状』になっている奴だ。

 早速『夕刻の海辺』を映し出していた。途端に慌ただしくなる。

「海も出しまーす」「OK。おじいちゃん、カメラ全部起動してぇ」

「今映しまーす。一番から十番をパネル壱に」「ちょっと暗いねぇ」

「明かり補正しまーす」「トップカメラ出して」「はい出たどぞぉ」

「パパ、トップカメラの映像、コッチに見せて」「少々お待ちをぉ」

「遅いんだよっ! パパなんだから、パッパとやりなさいよぉっ!」

「少々、はい」「ちっ自分で見て露光が足りてないって判らない?」

「あ今直ぐ」「仕事舐めてんじゃねぇぞっ一発でビシっと決めろ!」

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