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海底パイプライン(六十五)

 突然朱美が立ち上がって、大声を張り上げたものだから固まる。

 見れば口を押えて、顔を真っ赤にしているではないか。どうやら『優しい高田部長』が、本人に教えてしまったようだ。飲み会の話は一旦横に置いて、『オッズ確認』が静かに始まっていた。


 賭けの内容は、勿論『何時気が付くか』である。『気が付いた時点』は、『立ち上がった瞬間』で良いだろう。

 朱美の椅子に仕掛けられた『圧力計』が示した数値。それが『重圧から解放された瞬間の時刻』と共に課内LANを駆け巡っていた。


「フォーッ! 一時間以内、俺一人っ! 商品一人占めぇぇっ!」

 今『ガッツポーズ』をした奴が『当たり』だ。すると別のもう一人が立ち上がって『ガッツポーズ』をしたではないか。


「山内が当てると予想したの、俺一人ぃぃっ!」「大穴っ!」

 どうやら『誰が当てるか』も『掛けの対象』となっていたらしい。

 商品は『フロッピーディスク三枚』だ。今となってはドライブ装置が無いので、フォーマットすることすら不可能である。


「ちょっと『化粧室』に行ってきます!」「行ってらぁ」

 朱美は思わず高田部長を『キッ』と、睨み付けてしまっていた。

 心の中で『余計なことを言うんじゃねぇぞ』と思いながら。


 高田部長が『朱美不在の間』に、『飲み会』を『朱美の送別会』も兼ねるように『変更してしまうのではないか』という疑義が。

 そしてちゃっかりと、メニューを『すき焼き』から『しゃぶしゃぶ』に変更する可能性も大いに考えられる。いや、高田部長なら絶対に変えるだろう。今の指摘が『予告』であると考えるべき。


 大体今日の飲み会は、『主任の奢り』なのだから参加費は無料だ。

 それを『送別会も兼ねる』になって『主賓』にでもなって見ろ。

 別開催だったら『二度美味しい』所を、何だか損した気分になってしまうではないか。


『いや、そうじゃなくて』と思い、朱美は首を振る。

 昨日の夕食で義母の静が『イーグルと話してみる』と言っていたのを忘れた訳ではない。きっと朝から呼び出していたのだろう。

 今だってきっと『その話』に違いない。何しろタイトルに、毎回『海底パイプライン』と出て来ているはずなのに、まだ全然関係無い話しばかりではないか。

 それに高田部長イーグルが以前、『自宅に来ていた』のも気になっていた。扉で振り返ると、高田部長が楽しそうに話している。


「何だこの『オッズ』って。お前ら仕事しないで何やってんだよぉ」

 どうやら『みんなで掛ければ怖くない』が、高田部長に見つかってしまったようだ。隠すのが遅いんだよ。直ぐに改造されるぞ?

「これ、結構レスポンス良いように改造すんの、大変だったんすぅ」

 しかし、何とか『苦労したポイント』を説明して『言い逃れ』か。

 朱美は眉を顰める。それは結婚式を控えて一番忙しい時期だった。


『その日は富士山に行っちゃってるからさぁ、俺の代りに。ねっ?』

『しょうがないわねぇ』『恩に着る』『まぁ『私達』のことですし』

 最初は意味が判らなかった。徹に頼まれて仕方なく引き受けた『留守番』なのであるが、それは『新居予定地』でのことだ。

 しかし、思い出しても身震いする。出来れば思い出したくはない。

 何しろ扉の前に『奴が居た』のが、余りにも衝撃的だったからだ。

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