海底パイプライン(五十七)
「見て見て。これって実は『こんなこと』も出来ちゃうんだよねぇ」
高田部長が指さしたのはノートPCの方。
「えっ? これって『動画』じゃなかったんですかぁ?」
驚いたのは無理もない。さっきまでノートPCとディスプレイには『同じ内容』が映っていたはずなのに、今見えているのは『操作画面』である。タイトルに『放映中』とある部分だけが、ディスプレイに出力されているようだ。
『あぁあぁあぁっ! イックゥゥゥッ』「ヤメr」「おぉおぉっ!」
「丁度『切りの良いトコ』みたいだし、今度は二人纏めてっとぉ」
画面の『プレイスタイル』欄から『3P』を選択する。すると横から覗き込んでいた制服の男が、直ぐ下の機能を指さした。
「この『シチュエーション』てのも変えられるんですかぁ?」
「おぉ。行ける行ける。どれにする?」「うわっ! 一杯あるっ!」
思わず叫んだのも無理はない。想定より多く表示されたからだ。
すると、何故か高田部長は困った顔になる。
「急ぎだから『一つで良い』って言ったんだけどさぁ」「はぁ」
奥様同士の会話のように手をパタンとやって、指で六を示す。
「六人居るって伝えたら『じゃぁ一つで良い訳ないでしょ』って」
当時を再現して怒ってまで見せた。言われた方は困るだけだが。
「はぁ。変わった部下の方ですねぇ」「だろぉ? コレにすっか」
『部長ぉ次は私の番です』『ダメよ。今日は私が先って約束よぉ』
まるで『実写』のようなムービーからスタートして盛り上がる。
「おっ凄い『3P』だっ!」「いい加減n」「黙って見んかっ!」
ガツンとやられた宮園を鼻で笑い、制服の男がベッドを指す。
「会社に『こんなベッド』があるんですか?」「それもそうだなぁ」
指摘を受けた高田部長は、急ぎ操作画面を確認する。
『じゃぁ、先にイッてしまった方が『負け』ということで決めるか』
しかしその間にも、リアルタイムで進行してしまっていた。
メニューの中に『舞台』を見つけ早速クリックしたのだが、どうやら選択肢は『キングサイズ・天蓋ベッド』しか見当たらない。
『ああん。お姉さま卑怯よっ! そこ私が弱い所だって知っててぇ』
『あら朱美さん、鍛えていない貴方が悪いのよ? あっソコはっ!』
「いやぁまだ『舞台』は変えられねぇや。スマン戻ったら言っとく」
苦笑いで報告されてしまうと、逆に恐縮してしまうではないか。
「いえいえそんな。きっと『家具屋の部長室』ですよ」「そっかぁ」
何か納得してくれたみたいでホッとする。すると高田部長は『ギャラリー』の選択肢を見つけたようだ。
「おっ? こっちは使えるみたいだなぁ」「何が起きるんですか?」
高田部長が答える以前に画面を見れば判る。
『ハァ……。ハァ……』『あっあっあっ』『こんな……。イイッ』
まだ『出番待ちだったキャラ』がベッドサイドに現れると、絡み合う三人を見つめながら一緒になって声を上げ始めた。
「この娘、床に倒れてましたよねぇ? ピョンと起きて並んでるし」
制服の男が指摘して笑っている。言われた方は感心しきりだ。
「良く見分けが付くなぁ」「そこはもう、安心してお任せください」
「何がだよ。確かにベッドの隅にいたのも起き上がってるしなぁ」
「二回戦に向けての準備ですかねぇ?」「これも言っとくわぁ」
どうやら『改善の余地』は、まだまだありそうだ。




