海底パイプライン(五十六)
「ご苦労さまですっ!」「おっ、時間通りだねぇ」
軍服を着た六名の屈強な男達が現れた。敬礼をしている。
しかし彼らは軍人ではない。吉野財閥で警備を担当している『自衛隊』の皆さんだ。一人は制服で。他は迷彩服を着込んでいる。
『あっあぁん。イイわぁ。サイコォォッ。あっあっあっあっ』
「早速ですいませんが、こちらにサインをお願いします」
差し出されたのは『身柄引き渡し書類』という名の『転属届』だ。
「ほいほい。サラサラサラッとぉ。はい。ご苦労様。よろしくね」
書類に『特別顧問 Eagle』とサインして返す。
『来てるぅ。もっと突いてぇぇっ。壊してぇ。めちゃめちゃにぃぃ』
「ありがとうございますっ! 元部下の方、お預かり致しますっ!」
実はこう見えて高田部長は、吉野財閥自衛隊で総統付特別顧問であったりして。吉野家の人間ではないのに中枢まで入り込んでいる、数少ない人材の一人だ。勿論、好き勝手にやってる。
『イクイクイクイクゥゥッ。あああああああっ!』
「あのぉ、これはもしかして、一種の『拷問』なのですかぁ?」
肩を竦ませ、口をへの字にしてディスプレイを指さす。
疑問に思うのもやむを得まい。ミノムシのように全身をグルグル巻きにされた男が、顔だけ出して『エロ動画』を見ているのだから。
制服の男だけがサインを貰いに独房へと入ったので、ディスプレイを覗き込んでいた。それ以外の宮園を運び出す係の男達は、興味津々な顔ではあるものの廊下にてビシっと待機中である。
今は久し振りの本土。『女の声だけ』で我慢しているところだ。
「止めてくれぇぇぇっ!」「おっ? 一人目終わったか。次行こう」
パソコンに向かって打鍵を始めると、二人目の朱美がやって来た。
直ぐに始まるのかと思ったら高田部長の手が止まる。
「お前らも見るか?」「!」「!」「!」「!」「!」
女っ気のない硫黄島からやって来た男達は思わず顔を見合わせる。
「ちきしょぉぉっ! 止めてくれぇぇっ! ぶっ殺してやるぅぅっ」
「本物じゃないけど、かなり良い出来だ。遠慮しなくても良いぞ?」
高田部長の笑顔は『=危険』と思っているのか、余計に男達は警戒している。本当は見たくて見たくて堪らないのだが。
「ほら、特別顧問の『ご厚意』を無にするんじゃない」
制服の男が苦笑いで手招きしているではないか。場が和む。
「はいっ!」「ありがとうございますっ!」「お世話になります!」
「クソォォッ! 見世物じゃねぇぞぉぉぉっ!」
今度は我先にと独房へ雪崩れ込む。『運搬』そっちのけか?
「おいおいこれは『拷問』なんだから、ちゃんと見せてやらないと」
宮園とディスプレイの間にも男が割り込んでいた。
「失礼しましたっ」「一番前に引っ張れ」「ほら一緒に見ようぜ?」
ベッドに座る者、床に座る者、宮園と共に六人で仲良く鑑賞だ。
『おっきぃ。これを待ってたのぉ。早く挿れてぇぇ。おねがぁいぃ』
『そんなに欲しけりゃ自分で挿れなさい』『はい仰せのままに……』
甘い声にトロンとした目。滑らかな指の動きでゆっくりと誘う。
「こちらイーグル殿が創られたので?」「いいや。部下に組ませた」
「そうなんですか。良く出来てますねぇ」「あぁ最新技術だからな」
呆れ顔としたり顔で向き合う二人。どちらがどちらかは言わぬ。




