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海底パイプライン(五十一)

「お客様ぁ、ゲーム内で標準装備にするとぉ、『ランダムに風が吹く』って噂、ご存じですかぁ?」「知らねぇよ。何だそりゃ」

 宮園の顔を見るに、本当に知らなさそうだ。説明は続く。


「では、ゲーム内アイテムのぉ『今日の衣装はコレッ!』てのは?」

 すると突然、宮園が怒り始めた。ネーミングセンスにだろうか。

「知ってるよっ! 『自動で衣装を決める』クソアイテムだろぉ?」

 違った。しかしそれだけで怒りを露わにされても困る。


「おや、そちらはご存じですか」「ガチャの『外れ』じゃねぇか!」

 この『ガチャ』とはゲーム会社にお金を払って、わざわざ『外れアイテム』を購入することである。それでも、十万円程使うと有用な『当たりアイテム』が出るかもしれないネッ! というものだ。

 元々はゲームを長い時間プレイした結果得られる『アイテム』を、そのプレイ時間に相当する料金で先に買った、と思えば良いか。

 そう考えると、裏で『拝金主義』と言われても仕方がない。

 本来『長い戦闘を経た上で入手可能なアイテム』であれば、アイテムを所有し、それを他プレイヤーにひけらかすことで、承認欲求を満たすことが出来るだろう。

 しかし『プレイスタイル』が伴わないと、逆に『拝金主義だ』と馬鹿にされてしまう諸刃の剣だ。


「まぁ、それを買い取る人も居ましてねぇ?」

「あぁ、知ってるよ。『ファッションショー』をやるんだろぉ?」

「流石。良くご存じで」「馬鹿にすんな」「いえいえそんな」

「何年プレイしていると思ってんだ!」「えーっと」「調べんなっ」

 宮園も『話が長くなる』と思ったのだろう。手が止まる。


「そこで『標準装備が出るとランダムで風が吹く』てのがね?」

「へぇ。そうなんだ」「はい」「で? 何処が嬉しいんだよっ!」

 プレイヤーは『キャラ装備』を自由にカスタマイズ出来る。

 女性キャラの標準装備は、何ら面白味も無い『白シャツ』『白スカート』で肌の露出は全く無い。下着だってわざわざここで説明する程の色気は無く、仮に見えたとて『ハイハイ見えましたね』だ。

 どうやら、高田部長イーグルだけは否定しているのだが。

 もしかして初期装備が『ド・ストライク』の変態なのか?


「いえ、重要なのは『影』の方でしてぇ」「影? 影がどうした」

「スカートが揺れますと『影の形』も変わりますよね?」「まぁな」

「結構苦労して描画してるんですけどぉ、御覧になったことは?」

「そんなの、いちいち見てねぇよっ!」「あら、それは残念……」

 モンスターと肉弾戦の最中に、自分の陰を眺めている奴は居ない。


「なので『スカートと影が一致しない状態』を検知しましてねぇ?」

「えっ? そんなこと、してるのぉ?」「はいぃ。してまぁすぅう」

 ニッコリ笑って『ディスプレイ』の方を案内する。


「この度それを、お客様の為に可視化したのがこちらになりますぅ」

 宮園は表示に釘付けとなった。それを確認した高田部長イーグルが扇風機を動かす。当然スカートが揺れて、影も踊り始める。

「東の風、風力三、徐々に上げて行きまーす。そぉれぇぇぇっ!」

 良くできたもので髪は風になびくし、キャラの姿勢だって『棒立ち』ではなく、ちゃんと見えないように前を押さえている。しかし風が段々と強くなるにつれ、スカートが真横になった瞬間だ。

 突然実験が中断され、画面に大きく赤文字が表示される。

『誤差四百二ミリ』「お客様ぁ。こんなことされると困りますねぇ」

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