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海底パイプライン(五十)

「あっ何何ぃ? 見たかったぁ? ざんねーん」「見たかねぇよっ」

「だよなぁ。お前には『こっち』が居るもんなぁ? かわいぃなぁ」

「俺が金払ってやってんだから良いだろっ! 何しに来たんだよっ」

 思わず大きな声を出していた。その声に驚いたのか、散々からかっていた高田部長イーグルが目を丸くして驚いている。両方の掌を顔の横にまで持ってきて。

 言い負かされて『以上』だろうか。ゆっくりと手を降ろした。

 ディスプレイには、再び『過去ログ』が映し出されている。


「お客様ぁ? お金を払っていても『NGなこと』は御座いますぅ」

 態度も口調も馬鹿に丁寧で寧ろ怖い。しかし『手の動き』はハッカーそのものだ。激しい打鍵音と同時に、その様子がディスプレイに映し出されている。宮園もその動きをきちんと追っていた。

 見た所、どうやら過去ログは『日付毎』に管理されており、それを端から開いては検索・確認を繰り返す。宮園が痺れを切らした。


「何が悪いんだよっ!」「あれあれ? 自覚が無いとおっしゃる?」

「無いねっ! 俺はちゃんと『ルール通り』やってるんだっ!」

 ここで『ネットゲーム』に詳しくない人には、例え数行でも解説が必要だろう。要するに『勝手にズルをしちゃダメ』ということだ。

 高田部長イーグルが大きな溜息をした。画面の動き止まる。


「そうですかぁ。お客様が普段ご利用になっていたPCと、それ以外のPCで『挙動』が違うんですよねぇ……」「……」

「あのぉ、お客様ぁ? もしかして『理由』って、判りますぅ?」

「判らんっ!」「おや。どんな設定にして?」「覚えてないっ!」

「おや。毎日ログインして頂いていたのになぁんにも覚えてない?」

「そんな『設定』なんて見ながらプレイしている訳じゃないだろ!」

 宮園の言い分は正しい。PCでゲームをする際、パーツの組み合わせは無限であることから、設定も多種多様となる。

 例えば半年ひとむかし前のPCでも遊べるよう、画面の解像度を調整出来るようになっていたり、ディスプレイの設置が横向きなのか、裏返しなのかを選択出来るようになっていたりするのだ。


「そうですかぁ。設定は御覧になっていないと……」「そうだよ!」

 ログが開かれていた画面を閉じるのを見て、宮園は強気に出た。

 しかし次に表示された『不思議な絵面』を見て押し黙る。


「こちらもですねぇ、お客様がまさか『規約違反をしている』と、疑っている訳でございましてぇ、一応調べさせて頂いたのですがぁ」

「何も出て来ねぇよっ」「はいぃ。残念ながら、そうなんですよぉ」

「じゃぁ良いだろっ」「でも、それじゃぁつまらないですよねぇ?」

 屁理屈に『カチン』と来たのか、思わず声も大きくなる。

「関係ねぇだろっ! んなこたぁ、そっちで調べろっ俺は客だぞっ」

 怒りをぶちまける宮園を前にして、渋い顔の高田部長イーグルがペコペコ頭を下げている。しかし目が笑っているのが気持ち悪い。


「そうなんですよ。詳細は良く判らなくてですねぇ。で、結局、こんな『検証ツール』を作りましてですねぇ? 実際に見て頂こうかと思いましてぇ。ご協力、頂けますよね?」「な、何だよ、それは」

 ディスプレイに映し出されたのは『宮園朱美』が『標準装備』を身に纏っている映像だ。その横にあるのは、幾つものパラメタと、キャラに指示を出すコマンドの数々。ツールなのにまぁ『ゲーム内の一機能』としてリリースされても、おかしくはない仕上がりだ。

 一つ不思議なのは、『何かの可視化』のために用意された『多数の扇風機』位だろうか。今は全てが『無風』の状態で停止中である。

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