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海底パイプライン(八)

「えーっと、確か『仲人』を?」

 マイナスニ十度か。お茶でダイヤモンドダストが見えたかも。

 眉毛をピクピクさせ、頷きながら一人づつ顔を覗き込む。


「あぁ、そうそう。仲人は、奴の趣味だったわね!」

 思い出したのは静のようだ。ちょっと待って。今隠したのは『刃物』に見えましたが、誰に何をしようとしていましたか?


「何だぁ。危うくNJSに『雨降らそう』かと思っちゃったよぉ」

 意味不明。気象予測士は『降雨の予測』が専門であって、雨を実際に降らす、しかも任意の場所に降らすなんて出来る訳がない。

 気象予測士の間で流行っている『ギャグ』とでもしておこう。


「見掛けに依らず『強気な冗談』を、飛ばしてくるのかい?」

 ちょっと嬉しそうに話をしているのは勝だ。徹は大きく頷く。


「朱美はね、こう見えて、結構面白いよ?」「ちょっと徹さぁん」

 恥かしそうに朱美が徹に縋っている。困っている顔も可愛い。

 徹がそう言うのだから、実際『面白い』のだろう。しかし今の立ち振る舞いは自然で、気品に溢れている。

 夫の冗談に『明るく付き合っているだけ』とも。良いことだ。


「ほぉ。何か安心だなぁ。『冗談好きの徹』に良くお似合いだぞ!」

 嬉しくなって、ついヒュッヒュッと二人を指さす。静は苦笑いだ。

 勝自身は一般家庭で育った。だから『上流階級の人間』には成り切れていない部分がある。故に吉野一族との交流も正直苦手だ。

 吉野財閥の集まりに『静の夫』として出席するが、完璧に『オマケ』状態である。その証拠に、ダンスが始まり、従兄弟連中に静を取られてしまったらもう最後。誰からも話し掛けられない。

 後は酒でも舐めながら、『壁のシミ』となってしまう。


「ほらぁもぉ。お義父が信じちゃったじゃなぁい。違うんですよ?」

 益々恥ずかしそう。本当に泣きはしないだろうが泣きそうな顔に。


「何々? イメージダウン? そんなの気にしないでしょぉ?」

 今日は『子供の頃の話』をしたからだろうか。徹も今は『悪戯っ子』に戻っている。すると朱美は、途端に頬っぺたを膨らませて怒って見せたではないか。でも直ぐに笑顔へと戻る。

 明らかに遠くから『コツン』をと拳を振った。それも愛らしい。

 何だか『招き猫』のようで、『怒っている』と言うより、『幸運を運んで来る』ように見えるから不思議だ。


「二人共、仲良くねぇ」「はい。お義父さま」「あっ、ずるぅい」

 わざとらしいと言うか、あざといと言うか。そんなことはどうでも良い。頭を横に振って『お返事』とは。

 楓でさえも、そんなお返事はしなかった。やはり育ちが違う。

 徹と朱美が『吉野財閥の集まり』に呼ばれることは無いだろうが、きっと『この嫁』なら物おじせずに、対処も出来よう。


「私から今度、『イーグル』に話してみるわぁ。何て言うかしら?」

 静も笑いながら、朱美に向かって手を振りながら話し掛けた。

「判りかねますが、ありがとうございます。よろしくお願いします」

 すると今度の朱美はいつになく真剣な顔。腰からのお辞儀だ。


「所で朱美さん、次にイーグルと会うのは?」「明日でしょうか?」

 肩を竦め明るく答える朱美に、勝と徹は大笑いで朱美を指さした。

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