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海底パイプライン(六)

「まさかぁ!」「食堂のおばちゃんって、変わったの?」

「いやぁ? 黒島さんのままだよ?」「あのおばちゃん?」

「じゃぁ、もう結構な年だよねっ?」「七十超えてる?」

「だと思うなぁ。いや、そうは見えないけどなっ!」

 どうやら『顔馴染み』の三人は、朱美を置いてけぼりにして盛り上がっている。長い硫黄島生活は、思い出深いのだろう。


「朱美さん、もしかして、硫黄島に行きたいのぉ?」「えっ私が?」

 これは静のお誘いか? 喜んだ方が良いのだろうか。

 朱美は驚きつつ自分を指さした。微妙な顔つきのまま、細かく首を傾げる。ちょっとの期間だけなら興味は有る。


「直ぐ人気者になれるよ」「はぁ? 私、『一般人』ですけど?」

 勝からも強力な推薦有りと受け取ってよいのだろうか。

「アハハ。でもその前に『護身術』を身に付けて貰わないとねっ!」

 何となく言われている意味について判ってはいたが、徹の『いやらしい目』と『いやらしい手付き』を見て確信に変わる。


「あなたが守ってあげないと、ダメじゃなぁい」「俺はダメだよぉ」

 静が渋い顔で徹を責める。しかし責められた側に『解決に向けた努力』をする意思は無いようだ。確かに『鍛えている』とは言え、それは『健康のため』であって身を守るべき『格闘技』については何も身に付けてはいない。それは朱美も同じだ。


「私に期待してもダメだぞぉ? 静か楓にお願いしておくれ!」

 突然勝は苦笑いで腕を勢い良く横に振る。『お義父さま助けて』の視線にとても耐え切れなかったのだ。

 格闘技については『静の右に出る者は居ない』と思っている。


「あら、私でどうにかなるかしら?」「なるなる」「ホホホッ」

 硫黄島は『女を渇望した野獣の巣』である。

 欲望に駆られた奴らが、後先考えずに束になって襲って来たならば、静でさえ無事では済まされないだろう。

 但しベッドで『一対一』になった瞬間、殺されてしまうのは確実。

 勝は毎回すんでの所で命拾いしている。今夜も命懸けだ。


「でも、私でお役に立てるのなら、行ってみたいな、とは思います」

 ちょっとモジモジしながら希望を言ってみただけ。無理にとは。

「本当? コントロール・ルーム勤務ぅ? 海底パイプラインの」

 ナイスアシスト! 流石は徹だ。すると勝の目付きが変わった。


「何? 朱美さん、コンピューター、詳しいの?」

 少し前のめりになっている。勝にとって『コンピューター』とは、最後の棒を付けるか付けないかで悩む単語だ。『エレベーター』とか『エスカレーター』とか『タイプライター』とか。


「えぇ、まぁ『詳しい』って言えるかどうかは、あのぉ色々なので」

 こういう時に自ら『詳しい』と言う奴程、実際は大して詳しくもなかったりする。ほら横で、徹が『ブッ』と噴いているではないか。


「何言ってんの。この中で一番詳しいよ」「そんな。徹さん……」

 困った顔をして『言っちゃダメ』な体で、手も足も伸ばす。

「だってNJSで『ハッカー』やってるんでしょ?」「え、えぇ」

 ウインクしながら『それはナイショってぇ』と困った仕草。

「そう! じゃぁ人工知能にも詳しい感じぃ? 今ちょっとねぇ」

 勝の方に可愛くウインクしながら、手で『ちょっと』を示す。

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