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海底パイプライン(三)

 朱美の微笑みの裏には焦りがある。久し振りに指示が来ていた。

 利用目的は判らないが、『海底パイプライン』についての情報収集だ。その後『何』に使われるのかを詳しく聞くつもりは無い。

 そもそも弓原家に取り入って、情報を引き出すことで命を繋いでいる。もう『危ない目』に合うのはお断りだ。


「お義父様、硫黄島の生活は、退屈だったんですか?」

 朱美から声を掛けられて、勝は『ん?』という顔をした。

 特に『距離を置いている』つもりはないが、朱美からのお願い事項は徹を通して来る。だからこちらからの返事も徹を通す。


「そりゃぁ退屈っちゃぁ退屈だけど、冬の富士山山頂よりはなぁ?」

 ちらっと静の方を見てから、徹の方を見て笑う。

 兎に角『若い嫁さん』には気を遣うのだ。万が一にも、何か『変なこと』をしてしまって『変態っ!』なんてことになってしまっては、もう取り返しが付かない。

 孫が生まれても、抱かせて貰えないかもしれないではないか。


「そりゃぁ、『面積』が全・然・違うからさぁ」

 実感を込めて徹が話すと、静も困り顔で腕をしならせた。

「ホームページの情報だと、何だか『缶詰状態』らしいわねぇ」

「そうなんだよっ! もう大変っ!」「あらあら。ご苦労様」

 徹は『やっと帰って来た』とばかりに周りを見渡した。

 勝夫婦の部屋と徹夫婦の部屋は、別々の玄関となっているのだが、間にある『この食堂』を経由して繋がっている。


「非公開の『娯楽室』なんてものは、無いのかい? 退屈だろう?」

 硫黄島は『非公開エリア』だらけである。だが勝は、先ずは『目の前にある扉の先』について詳しくを知らない。

 若夫婦二人の同意を得てお邪魔する場合でも、入室は玄関からにするつもりだ。もし孫が出来て、『おじいちゃん、僕の部屋で遊ぼうよ』なぁんて言われて手を引っ張られちゃったら……。

 それは仕方なく付いて行っちゃうかもしれないが、許して欲しい。


「全然。そんなスペースがあったら、観測機器が並んでるよ」

「そうかぁ。随分と手狭なんだなぁ」「しょうがないよ」「うぅむ」

 勝にどうにか出来る問題ではない。完全に管轄外だ。

 ちなみに『弓原家で使えるスペース』から『若夫婦に割り当てた面積』を考えれば、小さな家族食堂くらいは作れると思っている。

 朱美さんも相当な『お嬢様育ち』と聞いているが、自ら『料理する』って言ってたし、まぁ最初の内はそんなもんで良かろう。


「硫黄島には『特別室』みたいなのが、有るんですか?」

 朱美は話を『硫黄島』に引き戻したい。

 硫黄島は全てが『機密』に覆われた『一般人お断り』の島である。ガリソン油田の管理を任された帝国石油、つまり吉野財閥と、海軍の基地があるだけの絶海の孤島。それが硫黄島なのだ。

 しかも設備の殆どは『地下にある』と噂されており、衛星写真でもその全貌は明らかにされていない。正に『秘密の島』である。


「そりゃぁ、歴史もあるからねぇ。それなりに色々有るんだよねぇ」

「是非、お伺いしたいですわぁ」

 ちなみに、マンション最上階の殆どは弓原家の所有だ。

 ここで『殆ど』と言うのは『弓原家』の知るところであって、静の実家である『吉野家』的には全フロア占有である。

 余った所に住んでいる住人は、全て『静の黒子』だったりして。

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