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アンダーグラウンド掃討作戦(五百二十九)

「やってくれたなぁっ! おいぃぃっ!」

 何度目の『ドタバタ』だろうか。黒田にはそう見えたはずだ。

 いや、真暗だから見えないか。黒井が必死に操縦する様が。だから当の黒田は、冷静に『ポン』と黒井の肩を叩いただけ。やはり。


「じゃぁ、後は頼んだぞ」「待てやこらぁぁっ!」

 そのまま操縦席横から離れて行く。逃げるのか? 相変わらず真っ暗だが、黒井には遠ざかりつつある黒田の声からそれが判った。

 自分だけ助かろうとして、飛び降りるに違いない。怒りが沸く。

 しかし悲しいかなパイロット。体は『回避行動』を続けている。


「うぬぬぅぅっ! 曲がれぇぇっ!」

 ゲームコントローラーを思わず横に振る。今のはそんな気分だ。

 しかし現実ではそんなことをしても曲がれはしない。黒井の経験と勘では、壁まであと十メートル。ローターの先が当たる。限界だ。


『プスンプスン』『ガッ! ゴンッ!』『キンッ!』

 何かの音。おまけに天井までは三メートル。失速させようと上に向けていたが、それも限界か。ケツを右に振って頭を左に。曲がれ!

 左に振って『ほぼ落下』させ、ながらの? 全速全開。


「うううううっ! うりゃあああああっ!」

 曲がった。しかしまだ水平には出来ない。ローターが壁に当たる。

 落ちて行く。横の回転半径を十五メートルにすれば、前にある廃ビルを避けながら通りの中に抜けられる。

 どこか当たるかもしれないが、もう『安全な回避ルート』はそこしかない。運を天に任せて行くしか。


『ドッカーンッ! ドンッ! ボォォォン!』

 鈍い音。何が起きたのかは直ぐに判った。爆発音と共に明るくなり、前方に『脱出経路』が照らし出されたからだ。


「やったっ! 作戦成功だっ!」「ちっ」

 声からして明らかに黒田じじぃ。何だ奴は逃げ出さなかったようだ。黒井は思わず苦笑いで舌打ちしていた。

 どうやら『被害妄想』が強すぎる。黒田は単に『後ろの様子』を確認しに行っただけだったのだ。

 つい『逃げる』と考えてしまったことを『悪かった』と思う。


「上手く行ったなぁっ! (パチンッ)」「いてっ」「あははっ」

 お祝いの気持ちも含まれているのだろう。この馬鹿力め。黒井は痛いのを堪えて笑っていた。再び前照灯を点ける。

 判っていたことだが、ブラックホークは水平飛行に戻っていた。

 頭の中で描いた『3D模型』を頼りに障害物をすり抜けて、無事生き延びたことを実感する。黒井は頷き、満足して振り返った。


「じじぃっ! テメェ『何』背負しょってんだよっ!」

 目に飛び込んで来たのは非常用の『パラシュート』だ。しかも準備は万端で、あとは左手に持った紐を引くだけに。


「あぁっ? いつの間にっ! なんだこりゃあ?」

 黒田は紐を離した。絶対に演技だ。急いでパラシュートを脱ぐ。

「人を壁にぶつけといて、テメェだけ逃げようとしてたなっ!」

 黒田は両手を使い全力で否定する。更には『二個目』を見せた。


「そんなこと思ってないぞっ、ホラッ、お前のもあるっ! なっ?」

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