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アンダーグラウンド掃討作戦(五百二十三)

「待てないっ! ハイ右っ!」「何言ってんの?」

 黒井の質問に黒田は答えない。『作戦』と言っていた割には具体的な話は一切、いや、今『右』と言った。


「ホラッ! 右だよ右っ!」「何だよもぉぉっ!」

 今、右に旋回したら、鉄塔に近付くでしょうがっ!

 一瞬『敵を送電線に引っ掛ける』のかと思ったが、そんなことをしたら地域一帯が停電になってしまう。

 それは相手の方が良く判っているみたいで、鉄塔には近付かない。


「じゃぁ左に行ってみようかっ!」「何処行くんだよ」

 いつものことながら、『作戦の詳細』を明らかにしない。

 指示を出しながら、後ろから追って来る敵機の場所を確認してはいるものの、そんなことは黒井にだってある程度は想像が付く。

 現に今まで、こうして逃げ回っているではないか。


「はい。じゃぁこの辺から低空飛行、宜しくぅ」「ここぉ?」

 今度は廃墟となった商店街を指示された。冗談じゃない。

「お前なら行けるってっ!」「あぁもぉぉっ!」

 黒井は覚悟を決めて操縦桿を前に倒した。グングン高度が下がって行き、商店街入り口のゲートを潜り抜ける。


「スリルあるなぁ。えぇ?」「黙ってろっ!」

 そこは商店街とは言っても、『アーケード商店街』である。

 屋根は所々抜け落ちてしまっていて、ポッカリと穴が開いているが、ヘリが途中から離脱できるような大きな穴ではない。


「おぉ。やっこさんも、しっかりとくっ付いて来るじゃねぇかぁ」

 開いたハッチから後ろを覗き込んだ黒田が感心している。

「ここじゃぁ『撃って下さい』って、言ってるようなもんだろっ!」

 直線が続く商店街で、しかも逃げ道もない。黒田が振り返った。


「上手いこと言うねぇ。『商店街』だけにぃ?」

 黒田の突っ込みに対し、悲しいかな黒井の返事はない。

 前を見て、ぶつからないよう必死に操縦桿を操作しているのだ。


「『売って下さい』じゃねぇっ! 発音が違ぇだろっ!」

「お前、反応遅せぇよ。そう言うのは『直ぐ』返してくれないと」

 振り向いた黒井の所に、黒田が笑いながら戻って来る。


「あと、前良く見ろぉ? ホラ。曲がってんぞ?」

 パッと前を指さしてから目を合わせ、『ニカッ』と笑う。

「んん? うぉぉっ! そう言うのは早く言えぇぇっ!」

 黒井がバタバタし始めた。両手両足を使ってヘリを操る。

「今、教えてやったじゃねぇか」「どうすんだよぉぉっ!」

 それでも、イメージ通りに曲がれないのが明らかなのだろう。


「そんなこと言ったって。お前『運転手』だろ? 何とか曲がれ?」

「決めたっ! ぜってぇじじぃは『ナビゲーター』には雇わねぇっ」

 全力でヘリを左に傾けていた。このときばかりは黒田を下に見ているのだが、黒田にはそんな気は全くないようだ。笑っている。


「この先に『バリケード』作ったの、覚えてるぅ? 二人でさぁ」

 曲がれるか曲がれないかの瀬戸際で、黒井が目にしたのは黒田の『ウインク』である。しかもお互いを交互に指さして。初めての共同作業をした日々を思い出す。あたかも『走馬灯』の如くに。

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