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アンダーグラウンド掃討作戦(五百二十)

 黒井は低空飛行から、隅田川の堤防をヒョイと超えた。

 もしかしたら敵が、堤防に『ドンッ』とぶつかるかもしれないと思ったからだ。聞き耳を立ててはいるが、そんな気配はない。

 自らを心配する余裕もないが。必要最低限の高度で堤防を越える。


「右か左か」「海は左、うわっアブねっ!」「おぉっとぉ」

 左には橋があった。隅田川は干上がっているので、高さには余裕がある。しかし橋は例外だ。直ぐに反転したのだが、左に見えた橋は『鉄骨のアーチ』が見えたではないか。


「駒形橋かな」「あの『丸いアーチ』は、永代橋じゃないの?」

 黒田が振り返って確認したのだが、黒井は首を傾げている。

 どうやら黒井は隅田川に掛かる橋について、詳しくはないらしい。


「いや永代橋だったら、もう河口だろうよ」「じゃぁ引き返すか?」

『河口=海』と認識したのだろう。『次の橋』は近いが今ならまだ引き返せる。そう思って黒井は振り返った。きっと頭の中で『ヘリが通れる隙間は何処か』を考えているに違いない。


「だから違うって。登ったことあるから判るって」「登んなよっ!」

 パッと前を向く。後ろを見ていたのは『ほんの一瞬』に違いない。

 眼下には既に吾妻橋が見えていた。今度は『丸いアーチ』が無く、上空を通過するのにかなり余裕がある。

 黒井は後ろを見ながらでも余裕で通過だ。


『ガタンゴトン。ピーッ』「前っ! 前っ!」「ぬぉぉっ!」

 目の前に電車の姿が。次の橋は東武鉄道の鉄橋ではないか。終点の浅草駅に向けて、右から電車がゆっくりと現れたのだ。


「架線があるから下だっ!」「判ってるよっ!」

 黒井は『橋がある』ことは何となく判っていたのだが、それが『鉄道橋』とは認識していなかった。田舎者である。

 だからこのまま水平に飛んで、上を通過するつもりだった。


「ママァ。ヘコリプターが飛んでるよぉ?」

 長椅子に後ろ向きで座り、外を眺めていた男の子が振り向く。

「ほら隆ちゃん、もう終点だから、お靴を履きなさい」

 しかし母親は、足元にある靴を履かせようとしている。


「本当だってばぁ。ヘコリプターがねぇ? あっ、もう一匹!」

「ほらほらぁ。浅草着いたら『芋羊羹』買うんでしょぉ?」

 どうやら母子で事前に相談していたらしい。そのセリフを聞いて思い出したのか、笑顔でパッと振り返った。


「ジャガイモのっ!」『ガクッ』「さつま芋よぉ。はらぁ早く早く」

『ブルルッ』『間もなくぅ終点浅草ですぅ。お出口は左側ですぅ』

 ヘリの音もしたが、車内放送で掻き消されてしまった。

 ライトは付けていたものの、通過は一瞬のこと。それに橋から遠くを覗き込もうにも、カーブして直ぐにビルの中へと入ってしまう。

 後から続いて来たもう一匹は、ライトすら点灯していなかった。


「あっぶねぇ。でも上手く抜けたなぁ。あれ? じじぃ?」

 大分慣れたとは言え、こうも上手くすり抜けると『自画自賛』だってしたくもなる。折角ほざいたのに、肝心の黒田が居ねぇ。


「ダメだっ! 奴もまだ引っ付いて来てるぞっ!」

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