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アンダーグラウンド掃討作戦(五百十八)

「おいおいおいっ、見ろっ!」「見えねぇよっ! 何だよぉ」

 黒井は肩を連打されて『またぁ』と思う。

 黒田と『キスする距離』だと嫌なので、ちょっとだけ振り返った。

 あれ? 居ない。何処行った? グッと振り返ると、黒田は身を乗り出して、後ろを覗き込んでいるではないか。いつの間に。


「操縦なんか良ぃから見ろって。やったぞっ!」

 振り返った顔が満面の笑みである。対する黒井は疑いの眼だ。操縦をうっちゃって、一体『何を』見ろと言うのか。

 しかし黒井にも、見えないなりに『何が起きているのか』は判る。

 コンクリートが崩れ落ちる音。理由は兎も角ラッキーパンチだ。


「押し潰したのかぁ?」「あれは助からないだろう」

「ちゃんと見たぁ?」「見てないけど、グシャァァッて逝ったさ」

 左手でヘリ、右手で崩落する廃ビルを表現し、実際には見てもいないのに、リアルに潰されて行く再現まで。あらま完全に下敷きだ。

 黒田は左手首をクルクルッと回したかと思うと、顔の前に持ってきてパッと開いた。何が起きたかは推して知るべし。


「ドッカーンッ!」『ドガーンッ!』

 目を見開いて嬉しそうに表現した口から『リアルな音』が響く。


「ほら見ろっ! やったんだよっ!」「怪しいなぁ」

 黒田は速度を落とし、ホバリングからの左旋回。目視確認へ。

 こうすれば後部ドアから見ている黒田と一緒に、同じ景色を見ることが出来るだろう。こちらは窓越しにではあるが。


 見えて来たのは、確かに『崩れた廃ビル』である。跡形もない。

 しかし距離感がおかしい。咄嗟に思ったのはソレ。次に思ったのは、爆発が上過ぎること。だとしたら次に来るのは?


「掴まってろっ!」『キュンキュンキュンッ!』「うわっ!」

 黒井が叫んだのと、ヘリが右旋回を始めたのは同時だった。

 横向きに立っていた黒田にしてみれば、床面が突然後ろへ倒れ込んだようなもの。思わず手を伸ばした。

 しかし掴まる間もなくひっくり返り、逆サイドへと転がって行く。


 全てが同時に起きていた。そして黒井の判断が正しかったのだ。

 廃ビルの砂埃を突いて、OHー1が勢い良く飛び出して来る。

 右斜めになってはいるものの、視界が良くなってからの立て直しが早い。直ぐに左へ補正。しかし行き過ぎたのかまた右へ。


 多少コントロールが効かない? 見れば『瓦礫の直撃』を食らったのだろうか。左側面に大小多くの凹みが見える。

 しかしテイルローターを高く掲げ、それを細かく左右に振りながらも加速しているのを見る限り、『コントロールが効かない』のではなく、『ブチ切れている』と言った方がしっくりと来る。


『バババババッ!』『チンチンチンッ』

「当てて来やがったっ!」「なっ、うわうわうわ頼む頼む頼むっ!」

 機銃の発砲音が近い。それに、明らかに『キャビンへの直撃』と判る『身近な場所での金属音』が鳴り響く。意味あるかは別として、黒田は倒れたまま体を小さくし、両腕で頭を覆う。


「誰だよ『やった』なんて言ったのはっ!」「うるせぇっ!」

 生きてやがる。黒井は計器をサッと見て操縦桿を引く。上昇だ。

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