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アンダーグラウンド掃討作戦(五百十五)

 再び弾道が見えていた。前を見ている黒井が叫ぶ位だから。

 しかも今度狙っているのは『廃屋』ではない。『砂煙大作戦』はもう終わりなのだろうか。黒井は閃光の行先を覗き込む。


『カンカンカンッ!』「おいおいおいおいぃぃっ!」

 狙っていたのは『古い看板』だった。倒れ掛けの鉄塔だ。

 既に広告としての役目を終えて、静かに立ちすくんでいた広告塔に対し、黒田はお辞儀を強要したことになる。

 黒田の『緻密な計算』によると、それは後ろから来る敵の『目の前に落ちる』算段だ。


『バキバキバキッ!』「うわぁあぁっ!」「よっしゃぁ加速だっ!」

 しかし『まだ通過していない黒井』にしてみれば、それは恐怖以外の何ものでもない。操縦桿を思いっきり前に倒す。

 前々からじじぃのことを『狂った黒田』とは思っていた。いや、確信していた。が、しかし。飛行経路に自ら障害物を落として来るような奴だったとは、老害にも程がある。


「ざっけんなよぉぉっ!」「GOGOGOっ!」

 右に傾いていたヘリが加速するにつれ、右上方へと上がって行く。

 それで良い。前方へ飛び抜けるだけでなく、倒れ込む鉄塔から離れた方が安全に決まっている。この際計算も理屈も不要だ。


「『左端を飛べ』って、言っただろうがっ!」

 黒田が直ぐ横に来ていた。手を伸ばして操縦桿を左へ倒す。

「うわっ! 何すんだヨッ!」

 驚いたのは黒井だ。『今の倒し方』では、左に行き過ぎて廃ビルに衝突してしまう。そうでなくても『倒れて来る鉄塔の下』を、無理に通り抜けるだなんて。


「良いから行けよっ! ほらぁっ!」「ぶつかんだろっ!」

 黒井も大概だが、この場合は黒井が正しい。一つアドバイスをするとしたら、ぶつけるのは『意見だけ』にしておいた方が無難だ。


「もう『看板』無ぇんだヨッ! 左だっっつーのっ!」

「だったら降りて、探して来いヨッ! ロープ大好きなんだろっ!」

 黒田も大概だが、この場合は黒田が正しい。再びアドバイスをしておこう。今ロープでヘリを降りたら黒田はそのまま逃亡する。


「免許も無ぇのに『操縦しよう』だなんて、十年早ぇんだよっ!」

「十年経ったら、俺ぁもう死んでるわっ!」「今死んでろぉっ!」

 目の前に鉄塔が迫っていた。訂正。正しくは『目の上』と表現すべきか。たんこぶでも比喩的な意味でもなく、物理的な意味で。


「ぶつかるぅぅぅっ!」「もっと速度出ねぇのかっ!」

 黒井は『ぶつかる』と思っている。黒田はぶつかっても『俺だけは助かる』と思っていた。少々擦りむくのは我慢するとして。

 微妙に異なるそれぞれの思いだが、実はどちらにも根拠はない。


『ガラガラガッシャーンッ!』「抜けたっ!」「ッシャァッ!」

 生きている。崩壊した鉄塔は既に後方へと成りにけり。

 黒井はホッとして後ろを見たが、当然見えるはずもなく。しかし『今の作戦が失敗した』のは判る。思わず黒田の襟首を掴んだ。


「このクソじじぃっ! 落ちるタイミングが速過ぎんだろうがっ!」

「おっかしぃいなぁ。ピィッタシに落ちると思ったんだけどなぁ♪」

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