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アンダーグラウンド掃討作戦(五百十一)

 黒田は身を乗り出して固唾を飲んでいた。

 アンダーグラウンドは『戦場』で間違いない。しかし人工地盤の上には、一般市民が平和に暮らしている。

 もしも敵のヘリが柱や天井にぶつかりでもしたら、何処まで被害が及ぶかは判らない。まぁ、かなり分厚いコンクリートだから、余計な心配なのかもしれないが。当たれ当たれ当たれ。


「ちょっ、おいおいおいおいおぉぉいっ!」「やったかっ!」

 黒田が突然叫んだので、黒井がチラっと振り返る。

 何処かに衝突したならば、結構大きな衝撃音が聞こえて来るはず。

 結果確認のためだろうか。飛行経路を確認し、前と後ろを交互に見ているからだろうか。黒井は真っ直ぐに飛び続けていた。


「じじぃっ! 奴ぁ、逝ったのかぁ?」

 何度目のチラ見後か。黒井はじれったくなって問う。

 黒田の返事がない。黒田は身を乗り出して、重機関銃を構えようとしているではないか。何故か後ろに向けて。

 しかし『真後ろ』には向かないと見るや、パッと振り返った。


「逃げろっ!」「はぁ? 逝ったんじゃねぇのか?」

 黒田は腕をパタパタ振りながら急かしているのに、黒井は眉を顰めているだけだ。むしろ『自ら覗き込もう』とまでしている。


「ケツを取られるぞっ! 早く行けっ! 加速だ加速っ!」

 身を乗り出していた黒田が、機内に戻って来て両手を前に振る。

『ババババッ』「うわぁっ!」「マジかよっ!」『キュィィン!』

 直後に光跡が。もう確認するまでもない。撃たれている!

 黒井は遅まきながら操縦桿を前に倒す。スロットルも全開だ。

 ブラックホークはテールを上げて加速を始めた。


「おいっ! この距離で外すなっ! ちゃんと見えてんのかっ?」

 井学大尉は思わず叫んだ。臼蔵少尉が『また』外したからだ。

 後部座席から見ても、臼蔵少尉が必死に目を擦っているのが判る。

 何を況や、振り返った顔は苦笑いだ。思わずつられる。


「今度こそ『緑一色リューイーソー』になっちまいましてぇ」

「おめでてぇなぁ! だったら親っ被りも良いトコだよっ!」

 使えない奴だ。呆れる。しかし井学大尉には『余裕』があった。


 ヘリを上向きにして失速させながら捻りを加える。

 我ながら上出来だったと思う。逆さまに落ちながらも、進行方向は勿論、上下さえも入れ替えて見せる。殆ど曲芸飛行だ。

 タイミング良くエンジンの出力を上げて加速。あっという間に敵機の後ろを取った。散々手こずらせやがって。もう逃がさん!


「あぁ、もうちょっとで見えますっ!」

 頭を横に振って、両手でトリガーを握り締める。

「少尉、一発食らった方が『ピリッ』としたんじゃねぇか?」

「何言ってるんですか! 一発でも食らったら死んじまいますよ!」

 臼蔵少尉は腰を移動させて、自席の座面を指さした。大きな穴がパックリと開いているではないか。


「フッ。いっぺん死ねっ!」「あぁ? 笑ったぁ! ひっどぉい」

「お前が笑わしてんだろ!」「もぉ。勘弁して下さいよぉ」

「勘弁して欲しいのはこっちだっ! 今度外したら俺が撃つ!」

 更に加速する。敵が横に揺れ出した分、早く追い付くだろう。

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