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アンダーグラウンド掃討作戦(五百九)

 大きな廃ビルが見えて、その先は大通りが見える。

 仕掛けるならココ。井学大尉は操縦桿を右前に倒す。自転車でしか許されない、交差点での『アウト・イン・アウト』だ。


「うっわぁぁぁっ! ぶつかるっ!」

 迷惑を超えて既に違法。一番前での体験は恐ろしいに違いない。

 ただでさえ地面スレスレを飛んで来たのに、更に加速しながら地面へと迫るとは。ローターの右端は、あと僅かで地面を擦りそう。

 巻き上げた砂埃の下からは、遅まきながら『停止線』が覗く。


「来るぞっ! 良く狙えっ!」「ヒュゥ、あっぶねぇ」

 機体はまだ斜め。しかし狙い易いよう、若干『上向き』加減で。

 万が一にも敵の弾が一発でも当たれば、こちらもタダでは済まないだろう。しかしそれを言うなら、向こうは『剥き出し』なのだ。

 一発でも当たれば確実に『肉片』と相成る。そうだ。恐れるな。

 更に『攻撃手段を失った輸送ヘリ』など、攻撃ヘリの敵ではない。


「さぁ来いっ!」

 攻撃手が『出番だ』とばかりに張り切っている。良いことだ。

 見守る井学大尉も興奮していた。『久し振りの獲物だ』と。心の中で刻み続けていた『タイミング』まで、もう間もない。来る!


『来たっ!』『ババババッ!』『やった!』『ドッカーンッ』

 そうなる。が、来ない! 井学大尉は一瞬で冷静になっていた。

 こちらは加速したのだぞ? 向こうも『追って来ている』のではないのか? そうだ。明るいし、こちらに来ているのは間違いない。


「明るい? 合ってる?」「大尉殿! 敵はいつ来るんですか!」

 井学大尉はナイトビジョンを振り払った。臼蔵少尉を放置して。

 視界が『白黒』から『カラー』に切り替わった。今まで薄っすらと『白っぽかった世界』から『薄日が差す世界』へと変化。

 そんな光景を目にして、安心感と違和感を同時に覚える。


 ローターの陰がゆっくりと回って行く様が見えていた。

 信じられないかもしれないが、動体視力に優れた井学大尉ならばお安い御用だ。例え秒速何回転という勢いで回っていたとしても。


『上から光。ここは『外』なのか? 工事現場に出た?』

 目の前をローターが作り出す影が、規則正しく動いている。

 エンジンは絶好調。横目に見た機器はオールグリーン。目の前には、どこか懐かしさも感じる商店街が広がっていた。

 誰も居ない大通り。これだけ大きな通りなのに、人通りが全く無いのが違和感の理由か。電柱の陰、看板の陰から見て午後三時頃。


『あぁ、子供の頃に見た『日食』のときと同じ感じ……』

 すると急速に時間が進む。見えていた電柱の陰、看板の陰が、見る間に角度を変えて行くのが判った。

 その瞬間、エンジンに『ノイズ』が乗る。


「たぁ・いぃ・いぃ・どぉ・のぉぉっ! うぅえぇぇっ!」

 ローターが作り出す陰に『乱れ』を感じる。規則正しく動いているブレードに、『妙な動き』をしているのがあったのだ。

 回転軸が完全にズレてしまっているではないか。一枚でも無くなったら、空を飛んでいられなくなる、の、だ、が?

『ひ・か・りぃ?』

 井学大尉が見上げた空には、『白い太陽』が輝いていた。

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