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アンダーグラウンド掃討作戦(五百七)

「おぉしぃえぇろぉよっ!」『グルンッ!』「うわっ!」

 笑いながらお願いすることじゃない。付け加えるなら『重機関銃で脅しながら』と言うのも。俺を誰だと思っているんだ!

 黒井は驚きながらも、操縦だけはしっかりとこなしていた。

 落ち着いて考えれば、『今飛んでいるヘリのパイロット』を、同乗者が重機関銃でぶち抜くことはない。凄く『イイ笑顔』だし。


「撃つなら『向こう』を狙えっ!」

 ごもっとも。前と敵を見るので忙しいのに、加えて馬鹿な同乗者がいる後ろまで睨みを利かせないといけないとは。

 ご丁寧にもチラチラ振り返っては、『敵機』の方向に向かって何度も指さす。微妙に移動しているが『正しい方角』に向けて。


「良い所で、お前が『向き』を変えちゃうんだろうがっ!」

 気持ちは判る。黒田にも『撃墜の意思』はあるようだ。

 口で言うだけで無く、両手でヘリを表現。腰から上を固定したまま捻って、『ヘリの向き』についての熱弁をふるっている。

 振っている間に、重機関銃も外に向いていた。


「だったら『箱乗り』でもして、当てて見ろっ!」

 黒井の言う『箱乗り』とは、『段ボールの箱の上』にそっと乗ることではない。勿論『リンゴの木箱』にもだ。


「おぉおぉ! それは『良い案』だなぁ。やってやんよぉ」

 しかし黒田がイメージしたのは、『リンゴの木箱』らしい。

「やれやれぇ。ドンドンやれぇ!」

 時代だろうか。最近は『リンゴの木箱』は余り見掛けない。だから黒井がイメージしたのは、『ヘリから身を乗り出して撃つ姿』だ。

 黒田が重機関銃の取っ手を握り直したのを見て、次は『当然外へ出る』と思っていた。流石は黒田だ。その前にニッコリと笑う。


「コックピットごと撃ち抜いても、良いんだよなぁ?」

「ざっけんなっ!」

 黒井は左目で『黒田』を、右目で『敵機』を捉えていた。

 右手に握る操縦桿を巧みに操作して、再び機体の向きを変える。


 左側を平行に飛んでいた『敵機のテイルローター』が、一瞬角度が変わって見えた。直後に廃ビルの陰へと姿を隠す。

 角度からして、その先にある大通りを右に旋回して来るのだろう。実に『良い度胸』だ。重機関銃なんて『全く怖くない』と。


「とととっ! 何だぁこのっ! 下手くそっ!」「うるせぇっ!」

 黒井が『変えた向き』とは『上』である。黒田は予期せぬ動きにバランスを失っていた。しかし直ぐに対処する。

 舌も噛まずに怒号を飛ばし、足を踏ん張って耐える。その上で重機関銃の取っ手を強く握る。こうなりゃ意地でも倒れん! 絶対!


 しかし『ヘリの姿勢』は、増々おかしくなる一方だ。

 黒田は足を広げ、腰をドスンと落としていた。ヘリの床面に対し垂直の姿勢。それが何だか『後ろ向きに飛んでいる』と思える。

 確実に『気のせい』ではない。それどころか、目の前に見えていた廃ビルの景色が、『下方向』へと動き始めた。頭に血が上る。

 おいおい、遂には『道路』まで見えてしまっているではないか。


「お望み通り拝ませてやっから、良く狙えよっ!」

 黒田の返事を待たずして、ヘリは廃ビルの上へと躍り出る。

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