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アンダーグラウンド掃討作戦(五百四)

「何も見えんな」「良く探せ。外に出たかったらな」

 今度は互いの顔が近くになっているのに、全く気にならない。

 一致団結。一見『協力体制』を取っているようにも見えるが、実の所はそうでもない。


 パイロットの黒井は、確かに早く外へ出たい。

 外へ出たら思いっきりかっ飛ばして高度を取り、『宙返り』を一発かましてみたいと思っている。

 まだ自衛官だった時代に、先輩から聞いたセリフが忘れられない。


『ねぇねぇ黒井ちゃん。知ってるぅ?』『いや、知りませんよ』

『だよねぇ』『何すか』『良いこと教えてあげよっか?』

 それはいつもの調子で始まった『ノリの軽い会話』であった。

 先輩は黒井を見掛けると、いっつもニコニコ笑いながら近付いて来て、勝手に『言いたいこと』だけを喋って去って行く。

 耳元でそっと囁き、最後は笑顔で背中をペチン。


『ヘリで宙返りってさぁ、一般的には無理なんだよねぇ』『はぁ』

 何なの。戦闘機乗りには関係ない話だ。いや戦闘機乗りだって、『任務中に宙返り』なんて滅多にはしない。『するような場面』になったら大変だし。あぁ『訓練中』なら幾らでも。


 操縦には大分慣れたし、狭い所を『真っ直ぐに飛んでいるだけ』なのにも飽きた。もっと自由に飛びたい。遊びたい。楽しみたい。

 どんなことをしても、今なら『上官には怒られないであろう』この状況下で、今こそ『検証をする』チャンス到来である。


 一方の黒田も『外に出たい』と思っているのは同じだ。

 陸軍に大分攻め込まれている。レッド・ゼロの戦力が削がれ、虎の子の五番隊も敵に飲み込まれてしまった。本部も物理的に崩壊。

 いや、本部に『止めを刺した』のは『誰かさん』なのだが。


 こうなったら『次の作戦』に移行する必要があるだろう。

 きっと地下道から逃げ果せたであろう『レッド・ゼロの残存兵』をかき集め、独自に集めたメンバーと合流させる。

 この『ヘリ』は、そのために確保したものなのだから。


「おいあの辺、ボヤっと明るくないか?」

 廃ビルを通り過ぎた瞬間だった。黒田が暗闇を指さす。

 朽ち果てた廃ビルに残る一片のガラスが、『キラッ』と一瞬光ったのが? 見えた? 今まで暗かったからだろうか。

 それとも『ヘリのライト』が、ガラスに反射しただけか?


「おい、向こうだよ。ちゃんと見ろ!」「……」「おいっ!」

 黒田は黒井の肩を叩いた。黒井が『反対側』を見ていたからだ。

 再度呼び掛けても返事がない。黒田は肩を掴んでやろうかと。


「うわっ、とっとっとっ! 馬鹿っ! 逆だよ逆っ!」

 突然左へ旋回するヘリ。少しだけ右を向いて飛んでいたのに、それがグルンと左へ回る。機首も上げているではないか。

 速度まで急激に落ちたものだから、黒田は肩を掴む所の騒ぎではない。前につんのめって、転がり落ちるのを防ぐのがやっと。

 当然『文句の一つ』も言いたい所だが、顔を上げたときに見えた『黒井の目』を見て凍り付く。一瞬にして『理由』が判ったのだ。


「ケツから敵が来るっ! 準備しろっ!」

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