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アンダーグラウンド掃討作戦(五百三)

 誰も居ない後部から大きな物音がして、黒井は振り返った。

 何事か? しかし一目見て『チッ』と舌打ち。直ぐに前を向く。


「何だよ。生きてたのかよ!」

 舌打ちは何だったのか。黒井は笑っている。

 そうだ。考えてみれば『ヘリから落下した』位で、死ぬような奴ではなかった。いやいや、どんな理屈だ。


「プロペラに巻き込まれて、危うく死ぬとこだったよっ!」

 惜しい。しかも頭を打ってもまだ元気そう。やっぱりそう簡単にはくたばらないか。勿論『言い方』だってあっけらかんとしていて、全然『現実味』がない。

 こいつ、本当に『死ぬ』ことなんて、あるのだろうか。


「えっ、今のでぇ? じゃぁ、もっと傾ければ良かったなぁ」

 チラっと後ろ向いて、『どこも掴んでいない』のを確認。直ぐに操縦桿を倒して、ヘリを揺らしに掛かる。手加減はしない。


「全く。『真横』なんかにしやがっあああああああっっとぉ!」

 後ろから絶叫が聞こえて来て、黒井は口を開けて大笑いだ。

 きっと黒田は、黒井が必死になってヘリをコントロールしている間も『楽しんでいた』に違いないのだ。絶対、そうに決まっている。


「馬鹿野郎っ! また落とす気かっ!」

 声がしたと言うことは、落ちなかったらしい。残念。

 直ぐにズケズケと歩く足音が近づいて来る。

「最初は『自分から』落ちたんだろうがよっ!」

 前を見つつ、操縦席から体をずらして後ろへと叫ぶ。

 飛行に差し支え無しと見るや『チラッ』と後ろを向く。するとそこには『黒田の顔』が迫っているではないか。思わず首を竦める。


「『お帰りなさい』位、言ったらどうなんだっ!」「いてっ」

 予想通り『ゲンコツ』が飛んで来た。勢いで操縦桿が『よからぬ動き』をしないよう『そっと』である。黒井が笑う程度の強さで。

「いってらっしゃい」「このゃ、今『ただいま』した所だ。たくぅ」

 黒田も笑っている。まぁ、何はともあれ、これで良しとしよう。


 操縦席の横に『ニュッ』と顔を出した黒田が、前方を指さした。それだけでなく、肘が黒井の頭に当たるように横に振る。

 こいつ、さり気なく『仕返し』をしているのか。絶対にわざとだ。


「この辺を右に行った先に『工事現場』がある」「はぁ、何の?」

 何か言っているが、それより今は左手で『邪魔な腕』を払うのみ。

「そこから地上に出るか」「えっ、ココを出られるのかぁ?」

 思わず振り向いていた。危うく黒田と『キス』する近さだ。

 それでも、早く『こんな所』を脱出したいと思っていた黒井には、願ったり叶ったりである。キスの一つや二つ、サービスしても良い。


「前を見ろ。曲がり角を見逃すなよ?」

 黒田にはその気無し。迷惑そうに肘で突き返す。反応も速かった。

 しかしよくもまぁ、そんな所まで調べているとは流石だ。


「何処だよ。何か目印は無いのか?」「ある訳無いだろ」

「んだよ。無いのかよ」「ちょっと明るくなってる所だよっ!」

 黒田が上半身を操縦席にめり込ませて、必死に『右側』を覗き込んでいる。黒井は前と右が見易いよう、少しだけ機体を右に向けた。

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