アンダーグラウンド掃討作戦(四百九十四)
「あれは何だっ!」「鳥だっ!」「随分デブい?」
爆炎を従えて飛び出したアルバトロスを目撃した奴らがいた。
大分混乱している。さっきアンダーグラウンドで見るはずの無い『ヘリコプター』を見物したばかりだし。
見たことのない機種だが軍用ヘリっぽいので、『味方なのかな』と思いきや。しっかり攻撃を受けたではないか。
その直後、敵本部をも攻撃して見せる。まるで『第三極』を自認するかのような動きに、戦場は混乱の極みにあった。
と、そこへ大爆発。現れたのは丸々と太った『七面鳥』である。
彼らは銃の引き金を引くのを止めて、その行方を目で追う。
爆風で『羽根』が吹き飛んでしまったのだろうか。既に丸焼けか。
随分と細くなってしまった翼。それでもしっかりと、上昇気流を掴もうとしているのが見て取れる。グルグル回し始めたからだ。
足も飛行に関係しているのかは不明。後から思えば、放物線の最高地点に到達した瞬間から足漕ぎがスタート。
しかし敢え無く、向かいの廃ビル跡へと突っ込んだ。
そこは誰も近付かなかった『ネバネバ地帯』である。
網に鳥もちを塗りたくった物が、敵本部ビルに掛けてあった。
兵士達が到着したとき、そこには既に多くの調和型無人飛行体がくっ付いてしまっていたのだ。どうにもならぬ。
網から無理に外そうとすると危ないので、敵本部ビルから網ごと引き離しておいたのだ。反対側にある瓦礫の山が幾ばくか高く。
『ドンッ! ゴロンゴロン』「うわっ、何だこりゃぁぁっ」
勢い良く転がりながら、網を体全体へと巻き付けていく。
すると『仲間っ!』とばかりに調和型無人飛行体が寄り添う。きっと、ひょんな所に現れた『開発者』を慕い、集まって来ているのだろう。本人も嬉しそうにしているではないか。
「うわっ! うわうわぁぁぁっ!」
叫び声まで上げちゃって。驚く程嬉しいのが丸判りだ。
言葉とは裏腹に、勢い良く飛び込むのをその柔らかな胸で優しく出迎えると、両腕で包み込む。まるで愛娘の扱いそのものだ。
勢いのままに転がり始めれば、背中から足から大勢の子供達に囲まれて、やがて動けなくなった。
「助けてくれぇぇぇっ!」
気持ちは判る。しかし誰もが無視を決め込んだ。
さっきまで『鳥』だと思っていたのが、実は『人間』だと判ったからだ。大空を羽ばたくに見えて、やはり目の錯覚だった。
「どうせ浮浪者だろ?」「だな。ズボンも買えないのか」
見立通りだ。しかし浮浪者ではない。不労者ではあるけれど。
まだ叫んでいるが、近付くのも嫌なので本当に無視。
「行くぞっ!」「おぅっ」「おぅっ」「GOGOGO!」
取り調べなんか後だ後。今は崩壊した敵本部ビルへ突入し、『幹部の遺体』が一つでも無いか調べる方が先だ。
銃撃が止んだレッド・ゼロ『元』本部ビル前は、機械から人へと主導権が移りつつあった。気が付けばヘリもいない。
結局『何処のヘリ』だったのかは、全くの不分仕舞だ。




