表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1137/1530

アンダーグラウンド掃討作戦(四百八十九)

 ロープに掴まって黒田は宙を舞っていた。身軽だ。凄く。

 さっきまで力の入っていた腹筋が緩み、腰も大分楽になった。旋回するヘリに合わせて振り返れば、見えて来たのは本部の惨状だ。


「派手にやっちまったなぁ。もうあの拠点はダメだな」

 本部が落ちるのは『時間の問題だった』と諦めるべきだろう。

 そもそも正規軍と正面からぶつかってしまっては、『勝てない戦い』だったのだ。ほら、見れば判るだろう。装備が違い過ぎる。

 三つの通りから迫りくるロボ軍団の内、たった一隊が到着しただけでコレだ。中央は未だバリバリ戦っているようだが、奥に見える左翼はもう突破されている。


「皆、生き残れよぉ。弾が尽きる前に撤退なぁ」

 聞こえないだろうけど、一応声だけは掛けておく。

 幾ら巧みに情報を入手し、入念な準備を積み重ねていたとしても、負けるときは負ける。戦場に『絶対』は存在しないのだ。

 第一、『何かのきっかけ』で全てが崩壊することなんて、戦場では良くあることだ。故に重要なのは『撤収の準備』までキッチリと計画し、それを見事に完遂することである。

 まっ、その際、『多少の犠牲』には目を瞑ろう。そのときだ。


『シュポーンッ!』「あっ! あの野郎っ!」

 黒田は驚く。思わずロープを離してしまう所だった。

 間違いない。オマケで付けて貰ったロケット弾を、勝手に発射しやがった馬鹿が居るではないか。


「一発しか無いんだぞっ!」『シュルルゥゥゥッ』「あぁあぁあぁ」

 光跡を残してロケット弾が飛んで行く。どう見ても『適当に撃った』としか思えない有様だ。フラフラしているではないか。

 良く狙っていれば、もっとビシッと飛んで行くに決まっている。


『ドーンッ!』「おぉっ? 良いトコ入ったかぁ?」

 数多の爆破物を仕掛けた経験から、『この辺が弱点だろうなぁ』と思うことがある。それは『図面』を見て計算し、ピンポイントで確認することもあるが、パッと見ただけ判ることもある。

 一流の建築士は、壁の中に隠れている『柱』『梁』『鎹』が何処にあるか判るらしい。それは経験というものだろう。

 超一流? それは壁の中に隠しているエロ本まで見抜く能力だ。


「イイネェ。ゴー、ヨン、サン、フタ、ヒト、マルゥゥゥッ」

 勝手にカウントダウンを始めていた。それがゼロになった瞬間、ゆっくりと壁が崩れ始める。さっき『屋根による支え』が消失して、構造が脆くなっていたからだ。もう止めようが無い。


「イィエェェイッ」『パパパパッ』「うわっ」『チンチンチンッ』

 喜びも束の間。ロボ軍団の足止めにはなったが、退避していた人間からの攻撃が殺到する。頭の上で跳弾したであろう火花が。

 完全に『ヘリを敵』と認識し、寄りによって黒田を狙って来ているではないか。黒田は苦笑いしながら首を傾げる。


「狙われる覚えなんて、何も無いんですけどぉっ!」

 どう見ても『陸軍の味方』にしか、見えないではないか。

 ヘリの塗装は迷彩柄。どう見ても『軍隊風』だし。機体番号やら部隊マークなんかはまだ入っていないけれども。それが怪しいのか?

 思い出して欲しい。最初の攻撃は『本部への急襲』であったし、次の攻撃は『本部への直接攻撃』だったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ