アンダーグラウンド掃討作戦(四百八十四)
「うわぁあぁあぁっ!」『ビリビリッ』「おっ、抜けたじゃねぇか」
少し斜めに移動したからだろうか。アルバトロスのズボンが引っ掛かって脱げ、フィギア柄のパンツが丸見えだ。ハート地で可愛い。
宣伝としては逆効果かもしれないが、一旦はめでたしめでたし。
「降ろせっ! 降ろせっ! 降ろせぇぇぇっ!」
鈍重な飛翔である。であるならば、飛ぶ姿は宛ら『アルバトロス』と言えなくもない。バタバタしているが、その百歩で譲って。
いや待てよ? アルバトロスが『足をバタバタさせる』のは、確か『飛ぶまで』であったはず。
「しっかり掴まってろぉっ! ヒャッハーッ!」
黒田はそんなことを、気にもしていないようだ。
何せアルバトロスは、一見黒田を『肩車している』ように見えて、その実、足に掴まっている状態である。
だから黒田がロープから手を離せば、二人は直ぐさま落下してしまうことだろう。黒田の握力は大変素晴らしいの一言。
心配事は何も『ロープのこと』だけではない。
ヘリを操縦する黒井は、近くに被弾したのに驚き操縦桿を引いた。
すると、当然ヘリは上へ。結果的に『スポーン』と相成った訳だが、そのまま上昇を続けては人工地盤に激突してしまう。
だからすぐ下へ。すると今度は地面が近い。じゃまた上へ。
あらら、今度は廃ビルに当たりそう。反対側へ。あっと、ちょっと上に行き過ぎた。故に下へ。あぁぁっとまた廃ビルが迫る。
こんな感じでフラフラと飛んでいるのだ。まだ墜落していないのが『奇跡』と言っても過言ではない。が、このままでは鬼籍に入るのも時間の問題に思える。ナムナム。
特に、ヘリの下にぶら下がっている二人は真っ先にだ。
「ウワァァッ! 当たる! 当たるぅぅっ、ウワーッ!」
廃ビルの壁が近付いていた。勢いが増すと叫び声が大きくなる。
「よいしょっとぉ! おっほぉ、上手く行ったぁ」『ガラガラッ!』
黒田はもしかして、『サーカス』に居た経験があるのだろうか。
ロープにぶら下がったままクルリと回転させると、背中から壁に近付く。そうして足を伸ばし、壁を思いっきり蹴っ飛ばして直撃を避けたのだ。見てはいないが、後ろからは壁が崩れる音が。
「ウワァァッ!」「お前、いちいち煩いぞぉ? そぉれっ!」
やっぱり陸軍じゃなくて、本業はサーカスに違いない。
果たしてそんな『出し物』があるかは知らないが、器用に体を反転させると、再び反対側の壁を蹴ったではないか。
「降ろせよっ! 死んじまうっ!」「自分で離せば良いじゃねぇか」
必死になっているアルバトロスを、半笑いでいなす黒田。
確かに『掴まっているのはアルバトロス』なのだから、逃げたければその手を離せば良いのだ。さぁ離せ。さっさと離せ。
「首に巻いてあるロープを解けよっ!」「あぁ、それかぁ」
「手離したら、首締まるだろうがっ!」「しょうがねぇなぁ」
全く。全てに於いて『人任せ』なアルバトロスである。
黒田が仕方なく片手を離して、ロープに手を掛けた。
「グエェェッ! グルジィ」「どうした?」「手を離すなっ!」
「何だよお前、ロープを解くのか解かないのか、はっきりしろっ!」




