アンダーグラウンド掃討作戦(四百八十二)
「いよう、久し振りぃ! 元気だったかぁ?」
ロープを降りての第一声。黒井のほぼ予想通りだ。
「イテッ! なっ? 何だぁ? 頭重っ!」
しかし『頭の上に着地』するのをドンピシャで当てるとは。流石は『相棒』と言った所か。良く判っている。
「助けに来たぜぇ」「テメェ、頭から降りろっ!」
そしてアルバトロスが悪口を言うのも、黒井の予想通りである。
あ、これは予想していなかったか。著者の予想だった。失敬。
謝っている間にも、アルバトロスは頭の上に両手を伸ばしていた。しかし、どうやら黒田の逆鱗に触れてしまったようだ。
「助けに来てやったのに、その言い草は何だっ! えぇ?」
その通りだ。完全に同意。だから黒田は、アルバトロスの後頭部を踏み台にして、後ろへジャンプする。自然とアルバトロスは前へ。
それでも振り上げた両手だけは上へ。頭上で『パチン』と音が。
空振りした手もそうだが、後頭部を蹴り飛ばされて何も感じない奴は居ない。そのまま頭を抱えて左右に振り替える。
しかしデブな上に体も堅いアルバトロスは、動く上半身だけで幾ら左右に振っても、真後ろを確認することが出来なかった。
仕方なく上を見る。すると一本のロープが見える。ヘリの姿も。
「助け何て、誰も呼んでねぇよっ!」
このままヘリなんかに乗せられたら、それは『空飛ぶ棺桶』に封印されるに等しい。それは一瞬にして思った。
狭い所でヘリコプターを飛ばすだなんて、ゲームの中でしか経験が無い。しかも何時間も掛かって、やっと飛ばせるようになった記憶がよみがえる。当然『無敵に改造済』の奴で、壁を擦りながらだ。
『ドンッ』「うわっ!」「じゃぁ、そのまま放置で良いのか?」
後ろから衝撃が走る。背中に何かが当たって再び前へつんのめった所に、首の横に『人の足』が見えたのだ。
おまけに耳元で囁く『聞き覚え』のある声。
「じじぃテメェ! 何し来たっ!」
どうもアルバトロスは『学習』しない奴だ。散々黒田から痛い目に合っているのに、今度も『暴言』を吐く始末。
やはり自分が『世界の中心』だと思っている奴と言うのは、気に入らないことについて決して妥協しないのだろう。
「お前に『じじぃ』何て、言わせないぞ?」「止めろっ!」
次に見えたのは『ロープ』だ。上から垂れ下がっている奴である。
黒田がアルバトロスの上に、乗っかっているからだろう。少し弛んだロープを、素早くアルバトロスの首に巻いたではないか。
ご丁寧に、グルングルンと『二回転分』も。
「お前、首太いから、このまま行けそうだなぁ」
アルバトロスの髪を鷲掴みにした黒田が、巻き具合を確認するために頭を左右に動かして覗き込む。アルバトロスは視界の隅に『黒田の顔』を確認して愕然とする。物凄い力にされるがままだが。
「死んじまうわっ! 良いから止めろっ! 待て! 悪かった!」
やっと思い出したのだろうか。しかしもう遅い。
「良し、引き揚げろっ!」「悪かったから止めろっ!」
黒田が上を向いて声を掛けたのがやっと視界の端に見えて、アルバトロスは首のロープを掴もうとする。




