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アンダーグラウンド掃討作戦(四百八十一)

 笑ってやがる。じじぃ、いや黒田は、黒井の笑顔を見て『操縦に大分慣れた』と考えた。一方の黒井は、黒田の笑顔を見て『何だかんだ言って、どうせ落ちないんだろう?』と高を括る。


「回収して行くかぁ?」「誰をだぁ?」

 突然下を指さして黒田が問う。黒井には何だか判らない。

「アルバトロスだよっ! デブの奴ッ!」

 身振り手振りで説明すると、黒井は納得して頷いた。


「あぁ、あいつか。でも奴はさっき『捨てた』んじゃないのかぁ?」

 いやいや。納得なんてしていないらしい。黒井にしてみれば、アルバトロスはただの『コンピューターお宅』である。

 設計情報を頭から抜き取った今、既に利用価値は無い。


「戦場で生き残った位だから、何かの役には立つだろう?」

 黒田の言い方によると、明確な用途はこれから決めるらしい。それでも『実戦経験』に於いて、黒田に反論するつもりはない。


「判ったけど、ここで『降りる』のは無理だぞっ!」

 ホバリングのため、忙しく動かし続ける操縦桿を指さして黒田が叫ぶ。直ぐに両手で操縦桿を握ると、前を向いたではないか。


 ヘリは完全に静止はしていない。数十センチ単位ではあるが、動きはある。この場の撮影記録を後で見たら少し酔うかも。

 黒井は必死に操縦を続けながらも、黒田の『次の指示』を今か今かと待っている。出来れば前へ『ゆっくりと』飛びたい。


「ちょっと『下』に行ってくる!」「何だって?」

 今度はちゃんと聞こえていたのに、黒井は驚いて振り返った。

 目が合った黒田は笑顔で、もしそれが『最後の姿』であっても、『素敵な思い出』となったに違いない。

 その顔が視界から突然『シュッ』と消えたのだ。下の方へ。


「馬鹿っ! じじぃ何処行くんだよっ!」

 耳を澄ましても返事はない。あの野郎、散々気分良く機銃掃射をした後に、自分だけヘリから降りやがった。逃げるのか?

 俺の操縦が信じられない? 墜落確定と思っている?


 カチンと来たのは事実だが、唾を飲んでゆっくり六数える。

 少し落ち着いた。ヘリの姿勢が落ち着いたのを確認すると、もう一度振り返って状況を確認。ロープがピンと張られている。


「誰がウインチを操作するんだよっ!」

 多分操縦席付近には無い。周りをキョロキョロしてみた。

 しかしその程度で判る物ではない。が、そうせざるを得ないではないか。やっぱりイライラして、思わず『じじぃ』と叫ぶ。黒田は下へ降りて、『戻って来る』のはどうするつもりでいるのか。


「下が見えねぇから合図だって判らねぇんだぞっ! 考えろよっ!」

 そうだ。黒田は思う。『三人』乗っていれば良かったのに。そうしたら三人目がウインチを操作して。あれやこれやとだなぁ。

 しかし今更愚痴をぶちまけた所で、どうにかなるものでもない。

 きっと黒田の野郎はロープでシュシュっと降りて行き、アルバトロスの頭の上に着地するのだ。そうしておいてどうせ『こう』言う。


『いよう! 元気だったかぁ?』とか。自分で捨てておきながら。

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